大切なものを握りしめた
「去年の誕生日はマフラー、クリスマスは香炉と手袋。バレンタインはハンドクリームで、今年の誕生日は漢方薬と帽子」
世間が浮かれるクリスマス。
例に漏れず、自分達も恋人同士で会っているわけだが。
プレゼントを渡した一拍後、目の前の相手は急につらつらと挙げ始めた。包装も開けないまま、どうしたのかと思ったら、呆れたようにため息をひとつ。
「君からは実用品か薬しか貰った事がないな」
『…ま、返す言葉もねぇけどさ』
実用品というか、まあ、防寒具だな。
何しろ半兵衛は白くてよ。寒そうというかなんというか…冬は意外と日射しも強いしな。
「君はそんなに僕を病弱だと思っているのかい」
そういうことでも無いと言いたいが、完全に否定できるほど思っていないとは言い切れない。
俺の沈黙を肯定ととったのか、半兵衛はもう一度ため息を吐いて包みを開きだす。
どうやら俺の選び方が気に食わないらしい。確かに、体が丈夫でない事を半兵衛が気にしているのは知っていたが、つい目につくんだから仕方がない。
しかし…この調子じゃ、おそらく今回のプレゼントもお気に召さないような気がしてきたな。
どうやって挽回しようかと思って間もなく、包みをほどく手が止まる。
『………半兵衛?』
ぴたりと止まった半兵衛に、ああやっぱりかと思いかけたが。
「やっぱり役に立つ物が嬉しいからね」
自分の事を思って選んでもらえた物なら尚更と。
中身を見た途端、まるで手のひらを返したようなその台詞を平気で言うのだ。
「当然、君がしてくれるんだろう?」
…言うのだが、そんなに綺麗に笑われては、最早見とれる他ないじゃないか。
『あ…ああ、勿論。構わねぇが…』
本当はそんなつもりはなかったが、喜んでもらえたならと、素直に嬉しがってしまう俺はいよいよ末期なのかもしれない。
…ああまったく本当に。ずるいとしか言いようがないね。
どうしたって俺は半兵衛には敵わないらしい。
ここまで惚れてしまっては、どうせ引き返せもしないだろうから。
腹をくくって、一生お前に従うよ。
(君の言うことが絶対。)
尻に敷かれる主人公(笑)
半兵衛が喜ぶプレゼントなんて作者も知りませんぜ!
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