いつだって真っ直ぐな気持ち





『……………』


いつもの街の、いつものデパート。
そして例年通りのクリスマスイルミネーション。

なんの不自然な点もない。


唯一、去年と違うのは、ただ隣に彼がいることだけ。


「……これは…すごい大きさでござる」

『(…ついでに、この馬鹿でかいブーツも初めて見たけどな…)』


今自分たちの目の前にあるのは、クリスマスによく見かけるブーツ型の菓子詰め合わせ。
親が小さな子供に渡すような、あれだ。


…ただ、大きさは特大。

隣で目を輝かせる幸村でさえ、胸まで入れるんじゃないか、ってくらいには長いわけで。


「しかし…佐助がなんと言うか……、だが、」


見るからに欲しそうな幸村だが、それでもまだレジには向かわないのは、単に佐助が怖いというだけだ。

まぁ確かに、あの厳しい佐助がこの量の菓子を見たら怒るか、さもなければ取り上げるかのどちらかだろう。
下手すりゃ幸村は一気に食いかねないから(それは流石に俺も止めるが)、仕方がないと言えば仕方がないが。


どう転んでも良い結果にならないことがわかっていれば、幸村でなくとも悩むのは頷ける。

頷ける、が…


『(30分はさすがに悩みすぎじゃないのかね…)』


たかが菓子、されど菓子。

現に自分の前にいる幸村は、さっきから抱えては戻すの繰り返し。
普段の潔さはどこへやら、うろうろと手をさ迷わすばかりで。

まったくもって、佐助は上手い躾をしていると言うしかない。
例えこの場にいなくても、完全にコントロール出来ているんだからな。



『幸村』

「は…!申し訳ございませぬ大輔殿!某、つい夢中に…」

『構わねえけどさ』


わりと不公平なパワーバランスとは言え、素直に従っている幸村が可愛いから、普段はあまり助けてはやらないが。



今回くらいは、ま、良いんじゃないかということで。


ブーツから離れない幸村の手を掴んで歩き出す。
幸村も、引っ張られるまま俺の斜め後ろをついてくる。


「大輔どの…?」


不思議そうな声と、反対の腕で菓子をしっかり抱え直すところがピンポイントで俺のツボだとは、まさか相手は知らないだろう。

もしこれがわざとなら、俺は一生プロポーズし続けるね。


『それは俺が買う』


まあ、今のままでも十分べた惚れな自覚はあるが。


「え…?」

『好きな時に俺の部屋に食いにくりゃあいいだろ』


遊びに来て食べる分には、まさか見つからないだろう。
いくらか菓子をつまんだところで、どうせ幸村はいつも通りに夕飯も食うのだ。
そう滅多にはばれないんじゃないかと思う。


『それでもバレたら、俺も一緒に怒られてやるよ』

「かっ…かたじけのうございまする!!」


嬉しそうに、目を輝かせてはしゃぐ幸村に、つられて俺まで嬉しくなる。

実際、幸村の訪問は、俺にとっても最高のプレゼントな訳だ。
結局、まとめて一石二鳥だなんて事は、この素直な相手は気付きもしないだろうけども。



まあお互いに、ひとつ目のクリスマスプレゼントということで。
なんとか佐助には隠し通したいところだな。







(君が笑うなら本望です。)

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