大雪日和





「やっばり積もったなぁ!」

『………積もったねー』


気力を振り絞って開けた雨戸。ネズミ色の氷みたいなそれをどかした先には、一面真っ白な雪景色。
ビル街だらけでへんな熱のあるこの都会ではあんまり見れない光景ではある。

『(…まぁ、貴重と言えば貴重なんだけどねー…)』

隣で、風情があるねぇ、なんて喜んでる慶次さんとは対照的に、純粋に喜べないのは私が荒んだ現代人だからなんだろうか。

『(…や、そうじゃないとは思うけど。というより、思いたいよね…)』

だって雪が積もったらヒールなんか履けないし、運が悪かったら電車だって止まってしまう。
私は地下鉄だからあんまり関係ないけれど。

『…あー…』

「紗希ちゃん?どうした?調子でも悪いのかい?」

『やー…そういう訳じゃないんだけどさ…』

余計な仕事を思い出してしまったというかなんというか…

「?」

『……雪かき、めんどくさいなぁと思って』

多分この量じゃ、日が出たくらいじゃ溶けないだろうし。危ないから道のとこだけでも片付けとかないと。

『…慶次さんやって』

「えぇっ!?」

『雪、好きなんでしょ?』

「そりゃそうだけどさ、風情がないっていうか…てか、紗希ちゃん意外としっかりしてるねぇ…」

慶次さん苦笑いになっちゃったけど、結局やってくれるみたいだからまぁいいや。

今回は慶次さんいてくれて良かったなぁ…なんて言ったら傷つくかもしれないから黙っておこう。
























「…もうちょっと温まってからでもいいかい?」

『えー…』

「だって寒くて出れないよ。後でやるからさぁ」

『…まぁ、たしかに。いいよー』

「さすが紗希ちゃん、話がわかるねぇ」






(って言って結局やらない。それでも許す気にさせる冬のコタツってば最強すぎる。)





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