丁
「…そういえば、お前はこれに触れられるのか?」
やっと落ち着いたところで、ずいぶんと今さらなことを言う。そんなことも分からないのに切ってくれと言ったのか。
まったく呆れるような話だけれど、確かにオレにも触れるかなんかわからない。
もしかしたら、同じように鎖を掴めないかもしれないし。
「…まあ、とりあえずやってみてくれ」
その短刀を使うのだろうと言われ、ようやく握りしめた刀の存在を思い出す。
今の今まですっかり掴んでいることを忘れていた。
鞘から引き抜き、地面に垂れた鎖めがけて思い切りそれを降り下ろす。力がちゃんと伝わるように両手で、しっかりと狙いを定めて。
でも…
『………………』
「………………」
…予定では、穴になった部分にまっすぐ突き刺さるはずだったのに。
「………お前もこれには触れないのか…」
降り下ろした刀はまっすぐ地面に突き刺さっただけ。
それらしい金属音すらしないまま、刀は鎖をすり抜けてしまったのだ。
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