安くて早くて安心で?
×かすが
「久しいな」
『…っ孟隻!?なぜお前が!?』
さっき帰ったばかりの相手が、なぜかすぐそばに立っていた。
だって…さっき、本当についさっき、じゃあなと言って帰って行ったはずなのに。
「いやな、さっきの帰り際、お前があんまり寂しそうな様子だったからな」
『わっ私はそんな顔していない!』
まさか、こんなヘラヘラした奴のことなんか…!
「バレたか。まあ、本当は私が離れ難かったのだ」
そう言って手渡されたのは、飴と小さな白い花。
さっき向けられた背中が、今はもう手のひらほども見えていない。見えるのは完全にこちらを向いた正面だけ。
…本当は、私だって
『……。安い手土産だな』
「買ったのは上杉殿の城下町だぞ?」
『なっ、違っ…物は自体は良いのだ!要は気持ちの問題だろう!』
苦し紛れの言い訳なんかでは、勿論こいつの憎たらしい笑顔が崩せるわけもなく。
「それは尚更仕方がない」
ただただそれはもう愉しそうに
「私は一刻も早くかすがに会いたかったのだ」
言って、一層深くなった笑みに不覚にもときめいただなんて…、死んでも言ってやるもんか。間違っても調子になんか乗るんじゃないぞ!
…まぁ、抱きしめてくる腕だけは…、振り払わないでいてやるが、な…。
〜〜〜〜〜
まだ帰らないでって言えないかすがに萌える。
- 32 -
[*前] | [次#]
ページ:
目次へ
topへ