02





「不審者はっけん!」

飛んできた矢をなんとか避け、慌て逆方向の岸に向かう。服がまとわりついて非常に泳ぎ難いが、あまり気にしてもいられないらしい。
どうやら射てきた相手も馬で対岸を目指しているようだ。結構な大回りにはなりそうだが、こちらに余裕があるとは思えない。

「逃げるな!」

『全力で逃げるとも』

叫ぶ相手と違い、呟くだけの声は向こうには届かないだろうが。

しかし残念ながら、相手の馬は大変な駿馬のようだ。
俺が陸に上がった時には、すでにその距離は100mもありゃしない。走ってみるだけ無駄な足掻きってもんだろう。

式神で逃げようかとも考えたが、また弓矢で狙われては堪らない。

「よーし!観念したな?」

一時的になと、頭の中でだけ返す。
例え呟きでも距離が近付いた今度は声が聞こえてしまうだろうから。

「どこの軍の間者だ?上杉か北条あたりか?」

『期待に添えなくて申し訳ないが、どっちでもねぇな』

「じゃあ武田か?今川ってことはないだろ」

残念ながら、全部ハズレだ。俺はどこの軍にも属しちゃいない。言ったところで信じやしないだろうがな。

『別にお前達の軍を調べに来た訳じゃない。見逃してくれないか』

「じゃあどこだよ?あんな池で何してたんだよ?こんな森に殿の城以外になんの用があるってんだよ?」

…あんまり一度に聞かれても答えづらいんだが。
腰の刀を抜かれないだけマシだがな。

『空から落ちたら偶然この池だったのさ』

半分は嘘だが、向こうには大した違いでもないだろうよ。





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