風を追う人
幸村→
「風を掴む術?」
ただ漠然とそんなものが、あればいいと思った。
「あるぞ」
『本当でござるか!?』
自分でから聞いてはみたものの、まさかあるとは。
驚く自分に、不思議そうな顔を向ける。
そうして懐から一枚、少し厚めの紙を出した。
「ほら。いるか?」
『是非!』
「…何に使うんだ?」
まさか風来坊でも捕まえる気かと笑う。
ひらりと渡された紙をしっかりと握りしめて。
『風に乗ってみたいのでござる!』
冗談にすぎない貴方の言葉。
だがもしも、もしも前田殿よりよほど風らしい貴公を捕まえられるというのならば、確かにそうしてみたいとは思う。
だがとてもそうとは思えないから。
だから吹き渡る風に乗り、
馬よりも速いその脚で、自ら会いに行きたい。
一度でも良いから
誰より早く貴方の元に行ってみたいのだ。
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