十三夜





鶴姫なりかわり
小太郎×





* * * * *






月が丸くなったから、今日も風は吹くだろうか。

そんなことを考えながらもたれかかる窓枠。見上げる月は真っ白い。
気になるなら占って見れば良いのだけれど、なぜだか占う気はなくて。先見もできるのに、少しも使おうとは思わない。

なんでだろうか、とぼんやりまた月を眺める。

それの光は明るくて、暗い夜には眩しいくらい。
それなのに毎回忍はやって来るのだ。
決まって満月。一番明るい月夜の晩にだけ。しかも、月が隠れていると来てくれないなんて。
あの忍はどうしてあんなに月にこだわっているんだろうか。だって月と忍なんて相容れないだろうと思うけれど。
でも確かに、あの忍は鮮やかだからか月夜も意外と似合う。それもまた不思議。似合うから、月夜に来るのだろうか。

本当に、あの風は不思議ばかり残していく。

そんなふうに徒然に、取りとめもなく考えていれば背中の方で風が吹く。
ああと思って振り向けば、窓の反対、部屋の奥にやっぱりあの忍が現れていて。

「  」

ひと月ぶりだと思って笑えば、声もなく相手の口が動く。
勿論、喋らない忍はただ口を微かに動かすだけ。
それでもそれは自分の名前。その唇が形作るのはまぎれもない私の文字。

音のないその呼び声がなぜだかとても嬉しいから、呼ばれる度に笑んでしまう。それはなんだか間抜けなような気もするけれど、目の前の忍もいつも笑ってくれるから、まぁ、良いのだ。


毎回毎回、ただこうして呼び合って笑いあう。
たったそれだけの事をしに、いつも忍は来てくれる。

そこでふと。

いつも必ず来てくれるから、やっぱり先見は必要ないのだと、やっとようやく気がついた。





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