一妻多夫
女主×小十郎前提、女主×政宗
* * * * *
少しずつ短くなっていった残り時間。
気付けばそれはもうほんの数時間だけになっていた。
「政宗」
バタバタと騒がしく、どこか浮ついたようにざわめく周囲とは裏腹に、たった今入って来た相手はひどく落ち着き払った様子で。
「いよいよだな」
「ん…」
今日はオレと孟隻の結婚の日。
…待ちに待った、夫婦になる日だ。
年上の孟隻は既に小十郎のつれあいで、伴侶であり良き右腕。当たり前のように小十郎の傍らに居るのをいつも羨ましく思って見てた。
まだ小さな子供だったころからずっと好きで、ぼんやりと、でもはっきりと一緒になるのだと信じていた相手。
そんな相手と、遂にオレも家族になるのだ。
「緊張しているか?」
正面に腰を下ろし、ニッと試すように笑う余裕があるのは孟隻にとっては二度目の結婚だからなのか。
…なんて思うあたり、オレはやっぱりまだガキなのかもしれないけど。
「まぁ…ちっとはな」
素直にそう言えばぐしゃぐしゃと乱暴に頭をかき混ぜられて。
「少しですむなら大したものだ」
その大きな手と優しい声に知らず知らずに頷いていた。
大好きな相手と大切な片腕。
ずっと遠くから眺めていた二人の間にやっと自分も仲間入りできるのだと思えばただもう嬉しくて。
「今日から改めて宜しくな」
熱くなる顔を俯いて隠しながら、差し出された手をしっかりと握る。
オレだけの相手ではないけれど、ずっと側にいてくれた二人だから。
たぶんきっと幸せは三倍。
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