反則です





女主×政宗+市





* * * * *






「今日は日差しが強いな」

苦しくはないかと尋ねる。
それに小さく平気だと返す声。

「美しい髪だな」

「蝶が来たぞ」

「明日は遠駆けするが市も来るか?」

そうやって時たま話し掛ける孟隻と、その度にうん、うんと素直に頷く少女。
二人はたいそう仲良さげに、ぴったりと寄り添って座っていた。




…あろうことか、孟隻の恋人である政宗の目の前で。

「Hey,girls…アンタら、いつまでそうやって引っ付いてる気だ?」

座る孟隻の足の上に抱えられ、遠慮がちに、だがしっかりと掴まって離れる気配のない市。
その市と隙間なく寄り添いながら、離すまいと左腕全体で抱える孟隻。

おまけにキョトンと不思議そうに、二人そろって見返して来るのが気に入らない。

「いつまでって…そりゃあ、気の済むまでだが」

言いながら、ごくごく自然な流れで市を支え直す孟隻の優しい様子が、更に政宗の神経を逆撫でする。
が、正直この人物は故意かどうかがわからないため、ここはあえて堪えた。

「随分堂々とした宣言してくれるじゃねぇか」

「後ろ暗い所は何もないからな」

ギッとねめつける政宗を前に、どこ吹く風と相変わらず孟隻は涼しい顔で笑う。

…と、いつもならばこのまま膠着状態が続くのだが、今日ばかりはそうもいかなかった。

「……市のせいで…、怒ってるの…?」

孟隻の膝の上から、ごめんなさいと消え入るような謝罪が入る。
二人にとってはありきたりな遣り取りだったが、初めて見る、まして市とっては自分を咎める声に聞こえたらしい。

実際政宗にとってはその通りなので、同意して追い返そうと思ったが、それよりも早く孟隻の方が口を開く。

「まさか。これが我々の愛情表現なのさ」

「本当…?市を…怒ってない…?」

怒っていると言いかけたが、市の孟隻に向ける縋るような怯えた目と、孟隻からの見えない重圧に流石の政宗も口を噤む。




その後もあやすような宥めるような孟隻の甘ったるい声を強制的に聞かされながら。
ついに限界だと政宗が邪魔に入りかけた時。


「孟隻は…あのひとのことが好きなのね」


そう零して、ふわりと笑う市をまっすぐ見ながら


「当然だ」


はっきりと断言する孟隻。

その横顔が、見たこともないほど穏やかで自慢げで。

なぜだか無性に恥ずかしいと感じたのは政宗がおかしい訳ではないだろう。
しかもそれが完全に無意識らしいとわかってしまえば。



簡単に顔が赤くなるのは悔しいが、嬉しすぎてぐぅの音もでないから文句も言えず。



結局、邪魔に入ろうとしただけで、向かい合う二人を前に政宗が何もせず座りなおしたのは言うまでもない。









(自分のことを話すアンタがそんな顔してただなんて、)






《「私が好いた男だから、きっと市にも優しいぞ?」》
《「…ほんと?」》
《「(否定してぇが死んでも否定したくねぇ…!)」》





* * * * *






愛娘をかまい倒す父・孟隻。
きっと女主の左腕はお市ちゃんの専用になるでしょう(・∀・)





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