ねぇ、ぎゅってして?





うっすらと目を開ければ、目の前は見事に霞みがかった世界。徐々に輪郭が見えはじめても、歪む天井が平らになることはまだなくて。
まさか俺様ともあろう者がこんなつまんない風邪なんか引き込むなんて。最悪、ありえない。

なのに大輔ちゃんは仕事行っちゃうし今日だけ雨だし気温低くて寒いし明日は二人とも休みの楽しい週末なのに。
最悪。ほんと最悪。もう嫌んなる。

大輔ちゃんだってひどいよ。普段はあんなに優しいこと言うくせに、こんな時は傍にいてくれないなんてさ。冷たい。ほんとに俺様のこと愛してんの?どうせ明日から休みなんだから、今日から休んでくれたって良いじゃん。弱ってる時くらい好きなだけ甘えさせてよね。





…あーあ…頭、ぐらぐらする。
腹の辺りがふわふわするし…。





………本当は……全部俺様が悪いんだけど、さ…。

遅くなるから寝てなって言われてたのに、大輔ちゃんが帰って来るの薄着でずっと待ってて風邪ひいて。

休むって言ってくれてる大輔ちゃんを、強がって無理やり出社させて。

案の定やっぱり寂しくなって、でもカッコ悪くてメール一本送れなくて。


だって大丈夫って言ったくせに風邪ひいて、大丈夫って言ったのに寂しがってさ…?あんまり身勝手で馬鹿馬鹿しいから、恥ずかしくってとてもじゃないけど大輔ちゃんに付き合ってなんかもらえないよ。

…ただでさえ、俺様普段もあんまり可愛くないのに。
全然素直になれなくて、こんなことで振り回したら、今度こそ愛想つかされちゃうかもしれないじゃん……そんなのヤダし…。




…あぁもう…せめて今日くらい早く帰って来て大輔ちゃん。
手を握って抱きしめてキスして離さないで。好きって言って愛してるってずっとずっと言い続けてお願い。
百万回名前を呼んで二度と俺様から目をはなさないでよ。





…こんな弱ってる時くらい、自由になんてしとかないで。
選択肢なんてくれなくていいから、強引に力付くで甘やかして。


俺様だって、たまには素直になりたいんだからね…?






(ドアが開くまであと三秒)




〜〜〜〜〜
タイトルは「恋じゃない、愛なの」様よりお借りしました。

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