受け入れる
『…お前、私を担ぐ気か?』
「違う!…オレの知ってる事は全部話す!だから、ともかく最後まで話を聞けよ…」
そう言い切って続けられた伊達の話は、到底信用できるものではない。
主上が千年以上も前に没しておられ、私だけがこの異国の地に甦ったなど、張角の救いより胡散臭い。
おまけに、目の前の伊達にその話をしたのが私だとは…最早怒る気にもならんわ。
…しかし、
「この短刀が、その証拠だ。そうだろ…?」
震える手が、未だ掴んでいる武骨な刀。
私に向けて再度差し出されたそれは、紛れもなく私の物。仲間を守る為にと一年前に誂えた物だ。
「アンタはこの刀と何十年も乱世を共にしたって言った。特別にあつらえたとも。だから、この刀がアンタの物なのは間違いねぇはずだ」
真っ直ぐに私を見る眼は一つだが、伸ばされた手とは対照的に力強い。
首に触れる刃すら、まるで忘れたかのようだ。
「アンタが自分で渡す以外、どうやってオレがこれを手に入れるんだよ…」
確かにとは思うが、絶対に有り得ないと断定するのもな。
…だが、この見ず知らずの土地も、何故か操れる異国語も、奇妙な事だらけだ。
これでは虎穴と雖も入ってみる他ないか?
まして、一度信じると決まってしまった相手の言葉ではな。
一先ずは、尾っぽの先まで鵜呑みにするしかなさそうだ。
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