見つめる





最後の質問に答えた瞬間、得体の知れない寒気がした。

急に北風が吹いたような、背後で誰かが笑ったような、なんとも言い難い奇妙な違和感。それが目の前にいる孟隻の殺気と相まると、足下からざわつきが広まって落ち着かない。
周囲の全て、特に何が変わったわけでもないというのに肌が粟立つのを抑えられず、どうしようもない不安に駆られる。


そんなオレの内心を知ってか知らずか、孟隻は相変わらずひたとオレを見据えたまま。
その目がオレをどれだけ不安にさせるのかも、きっと今のお前にはわからないんだろ。

「…先ずはお前の名を聞こう。話はそれからだ」

名乗れと言ったその手にはいまだ短刀が握られたまま。
しかし先程とは違い、すでに鞘に収められているということは、一歩前進したと思って良いのかもしれない。

『…伊、達……政宗、』

喉元の刃を気にしつつ、恐る恐る口を開けば、孟隻が腕を組んだまま問いを重ねる。

「政宗が字か?」

『いや…伊達が姓で政宗が名だ』

「…?変わった名だな。辺境の民か?」

『違う、……お前が』

「私がなんだ」

急かすことはない、けれど、はっきりとした硬質な声が怖いとはじめて思う。

『…お前の方が、異質なんだ…』

冷たい目を必死に覗き込み、ここは奥州で伊達軍の支配下であると告げれば、周囲の殺気が更に一段濃さを増す。
まとわりつくような空気の中、自分でもよく息が出来ているものだと思った。





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