擦れ違う





俯いた顔を上げさせて覗き込めば、今にも泣き出しそうな子供の顔が。

痛みが怖いのか、それとも私が恐ろしいのか。
どちらにせよ、可愛らしいことだ。これならば直ぐにも情報を洩らすだろう。


『そう怯えるな。お前が素直に答えれば私とて無闇に傷付けんさ』


その言葉には何の反応も示さなかったが、まあ…どうでもいい。


腰の愛刀では長すぎるから、いつも通り短刀を取り出そうと懐に手を入れて…思わず動きが止まる。

指に当たる感触が予想と違うのだ。

掴み出して、今度こそはっきりと首を傾げた。
黒くつるりとした美しい鞘と、意匠を凝らした見事な柄。一見して高価な物だとわかるが、生憎私の刀はもっと血生臭い。

こんな綺麗な物ではない。


「……だ」


どうしてこんな物がと鞘走らせた時、曇りのない刃の向こうで消えかけたような声がする。


「…それは、オレの刀だ…」



そう言って初めて私を見据えた目は、確かにこの小刀が似つかわしいような美しいそれだった。





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