捕縛





自分の後ろを付かず離れず歩いている大男。
まさかあんなにもあっさりと頷くとは思わなかった。
ま、その態度にはもっと驚いたけど。
ちょっと考えるような仕草をしただけで、いとも簡単に見知らぬ相手に付いてくる神経が俺様には信じらんないね。
それだけ腕に自信があるのかもだけどさ。

しかし野放しにしないで済んだことはよかったにしろ、今度は今の状況に冷や汗が出そうなわけで。
予想だけど(たぶんかなりの割合で合ってると思うが)、おそらく俺様と男の間にある距離は常に相手の間合いだと思って間違いない。遠さがほとんど一定だし。
自分より腕の立つ相手の前を、いつ殺されるか分からないまま歩くんだ。気分がどんなもんか言うまでもないってもんだろ。
俺様だってできれば想像だけで済ませたかったね。

武田の城へ帰る間中、まるで生きた心地がしなかったよ本当に。




「ここでちょっと待ってて。今この城の主に話つけてくるから。いい?」


城門を抜けてすぐ。振り返って言えば男は、何が楽しいのか笑いながら頷く。
まあ素直でいいこと。
何考えんだか分からない分不気味だぜ。

…とりあえず一秒でも早く大将に知らせないとね。真田の旦那には悪いけど、流石にここまでの危険因子の取り扱いは一国の主じゃないと無理だと思うからさ。





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