完全不審者





森中に響き渡った轟音と、天を刺し貫くような長大な光の柱。

大いに城を揺るがしたそれに、考える前に体が動いた。


飛ぶように向かった件の場所で、木々の間から見たものは、見慣れない甲冑をつけた大男と、そいつに捕まったらしい部下の一人。


しかしまさか、言葉が通じないとは思わなかったけど。

どうやらこちらの言うことはわかるらしいが、そんなに都合のいい話があるんだろうか?

そう思ってじっと観察を続けていたら、


【○○○○○○○…】


…何を言ったのかはわからなかったが、その表情にはカチンときた。

明らかに見下したような、馬鹿にしたような視線に腹が立つ。緩く上がった口角にだめ押しされて、ついクナイを投げつけていた。


【…○○】


あっさりと払われたそれを無視し、愛用の巨大な手裏剣を振りかぶる。そのまま全力で攻撃に移る自分が、自分でも信じられなかった。
いつもなら、こんなに感情に走ることなどしないというのに。


だがそんな攻撃の嵐さえ、その男は半笑いのまま平然と捌く。こちらの息が上がっても、男の呼吸は乱れもしない。距離をとった時でさえ、まるで追う素振りすらみせないのだ。


『(…俺様完全に遊ばれちゃってるよ)』


まさかここまで次元が違うとは。

始末するという選択肢はないものと思った方が良さそうだ。


『(でもだからって野放しにはできないよねー…)』


こいつはちょっと他軍に入って欲しくはない。

というか、それだけは本気で不味い。
きっとこの男は徳川の本多より不味い。


『……ねぇ、』


この提案も、かなり危険な選択ではあると思うけど。


『アンタさあ…うちの軍にこない?』


ほかの選択よりは多少マシな気がしないでもないと思う。





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