第一発見者





【……ぅ】


鈍い痛み。
その感覚を散らすように首を振りながら、失敗したかとぼんやりと思う。
こんな怪しげな場所で気を失うとは。

だが幸いその間に異変はなかったらしい。怪我もないし武器もある。そう長い間意識を飛ばしていたわけでは無いのかも知れない。
大体こんな守るものもない地では、警戒しようにも何だか身が入らないというのものだ。


【(………)】


ぶつぶつと頭に文句は浮かぶが、それでもせっかく拾った生だ。むざむざ棄てる気にはならないが。

となればこの場は少々不味い。

いつの間にか側に人の気配があるようだ。早めに立ち去った方が良いだろう。

そう考え、立ち上がって武器に手を伸ばした時。

伸ばしたその手に目掛けて何かが飛んで来るのがわかる。
とっさに戟を掴み、払ったそれは……


…なんだ?


見たこともない真っ黒な…小刀か?
同じものがいくつも地面に転がっている。


「…ちっ!」


舌打ちと共に更に先程の小刀が降ってくる。
…面倒な事をする奴だ。そこまでされたら私とて戦わない訳にもいかないだろうに。逃がしてくれそうな雰囲気でもないしな。

どうして生き返って早々に武器を振るう羽目になるのだ。
まあ前回は散々他者の命を奪った人生だ。報いと言われればそれまでだがな。


飛んで来る小刀を適当に払いながら、その内の何本かを宙で掴むと、木の上で姿を隠した相手に向かって一本ずつ投げ返す。
やたらに素早い動きだが、しかしどうやらそれ程能力の高い相手ではないらしい。

珍しい戦い方ではあるが、それだけだ。
早々に終わらせるとしよう。

手に残る最後の一本を投げつけ、相手の逃げる方向を誘導する。後はただ、その場に行けば良い。予想通りに、容易く男は捕まった。


【おい】


「…!?」


【聞きたい事がある】


どうせなら、ついでにいくつか質問をしようと思っただけなのだが。


「!?、!!」


【…どうした?】


確保して地面に下ろした男は、布で隠した顔の中で唯一見える目をしきりに瞬かせるだけ。文句一つ言ってこない。


【怯えているのか?】


まだそれ程の目には合わせていないと思うのだが。

しかし首を捻る私に向けて、その男が呟いた言葉には流石に驚いた。


「…異人…」


何のことかと思ったが、すぐに思い当たる。
動揺を抑え、ゆっくりと男を見据えて言葉を選んだ。


【私の言う事がわかったら、手を上げろ】


その質問にも、男はただ呆然とするばかりで、何の反応も返さない。


【わからないのか?】


「…………」


再度問うてみたところで結果は変わらない。ただ見上げられるだけだった。


あまりの事態に思わず頭に手を当てる。


…何ということだ。


この地では、私の言葉が通じない。


はっきりと突き付けられた事実に、戟を抱えて腕を組む。
目の前の男のことなど、最早どうでも良かった。逃げたところで追う気がしない。

それよりも余程、面倒な事態が起きているんだからな。





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