女王バチ2匹目
「諦めが早い!!」
…誰?
「天帝様の使い、いわゆる天使だ!」
和服?中国風?みたいな国籍不明の服を着た綺麗な方は天使様らしい。
だから浮いてるんだな、きっと。うん。
「そうだ」
…え?
俺、声に出してたっけ…?
「出していないが、伝わるのだ」
…なんてこった。
そいつは素晴らしく便利じゃないですか!
「…は?」
わざわざ喋らなくていいなら楽チンですよ。
「…普通の人間は嫌がるんだが」
変わっていると言われたが、そんなこともないと思う。
だっていちいち声出すのって結構面倒ですよね?
「…まあ、いい。とりあえず私は説明に来ただけだしな」
そりゃありがたい。
だってこの落下、ものすごい理不尽な気がしますし。
「その前に、君はやけに周りから尽くされると思った事はないか?」
また突然…。
でも、まあ…あります。
つか…ありまくります。
毎日日替わりで誰かが送り迎えしてくれて、欲しいと思う前になんでも集まってきて、代われる行動はほぼ全て誰かが代わりにやってくれる。
おまけにそういうことをする為だけの集団がいて、万事つつがなく行う為にわざわざ(しかも自主的に)組織だって動いてたんですよ?俺がどんなに鈍かったとしてもそう思うでしょ。
「だよな。まずはそこから説明しよう」
以下その説明の概略。
天使様曰わく、俺には王の資質があるらしい。つまり天性の才能ってやつ。
「しかも、王の中の王、人の言葉で言うならば皇帝の才だ」
おまけに天帝様に(なんでか)たいへん深く愛されているらしいのですよ。
だから王の才以外にも、あらゆる才能も与えられているんだとか。
「だから、できなくて困ったことがないだろう?」
あんまり使ってないんですけどね…。
「そういうわけで、君は生まれながらにして王なのだ。王は王であり臣は臣でしかない。それ故、人は君の前に頭を垂れる」
…確かに、ありがたいです。ありがたいんですけども、ちょっと今の世界では異常っぽいというかなんというか…。
ぶっちゃけ明らか珍しいんですよ。俺みたいなの。おんなじような人見たことないし。
「そのとおり。おまけに君は何事にも意欲が薄い。本当ならば国を統べる事さえ簡単なのだがな」
いやね、やっぱり無理が通り過ぎるのも気持ちが悪いじゃないですか。
俺は大勢を助けてやろうなんて気はさらさらないですが、だからって自分のせいで誰かにしわ寄せがいくのもやっぱり嫌なわけで。
「いやいや、いい方に回るなよ。だからって何もかも受け身になるのは違うだろ」
…ですよねー。
単に面倒くさがりなんです俺。
「ま、だからそれについては天帝様もお悩みになって、こういう結果になったわけだ」
え?それでなんで落下とつながるんですか?
「放っておくには君は人を惹きつけすぎるが、あまりにも無気力だからな。ゲームソフトの中のキャラクターに置き直すことになった。今はその両世界間を移動中なのだ」
はあ?なんでゲームキャラに?
「誰かの操作を受ける存在であり、また人を惹きつける」
ちょっと強引じゃないですか。その理屈…
「そうか?とはいえ、君にとっては生身に起こる現実だ。あまり気にしない方がいい」
にっこりと笑う天使様。
…まぁ、いっか。決まっているなら従いますとも。
だって雲煙過眼は俺の座右の銘だもの。
そろそろそのゲーム世界とやらに着くらしい。意識が朦朧としてきましたよ。
「…それから、天帝様は変わらず君を愛しておられるからなー!」
なんとか聞き取ることには成功したが、返事をしたかも危ういくらい、もう俺はぼんやりとし始めてしまっていた。
すいませんねえ、天使様。
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