毘沙門式城外散歩
良いお日柄ですね皆々様さま!
今日はテンション高めでお送りします香月です!
なんでかって?
ふっふっふ…それはですね…
なんと!本日俺は我が愛しの謙信公とお出掛けしているのですよ!!!
これがテンション上がらずにおられましょうか!?否!不可能でございます!!
普段なら出かける(しかも徒歩)なんて面倒この上ないことは可能な限り避けますが、こればっかりは別です!特別です!別腹なのです!!
だってだって謙信公とですよ?超然美人とのおデートですよ!?
そりゃ行きますよ!
いくら俺がものぐさでも!!
俺のヴィーナス!この世の女神!むしろアテナと讃えましょうか!!
視察でも偵察でもなんでもお供させていただきますとも!
こと貴方に関しては俺はものぐさ返上いたしますよ!
…しかしまぁ、そんな目立つお方とこっそりお忍び城下視察とか無理じゃね?とか始めは思っていた俺ですが。
これがなかなかどうしてバレないんですよねー。
確かに道行く人は謙信さんの美貌に見とれて止まるし、立ち尽くしっぱなしと言えば立ち尽くしっぱなしなんですが…、バレないんですなこれが。
それについてはみんな謙信公の絶世っぷりに意識が行って身分にまでは考えが回らないんじゃないか、というのが俺の推測その一です。
(その二はいつもの白い頭巾と青い戦装束が印象的すぎて、外しちゃうとみんな自国の領主さまイメージと重ねられなくなっちゃうんじゃないかっていう……ね?いや、推測ですよ?)
それに目立つと言えばもう一人、越後の誇る自慢の不二子ちゃん…もとい美女かすがさん。
あっちはあっちで密かに俺たちを警護してくれてるんだけども…ってか、しようと思ってくれてるんだろうけど、彼女の周りにキラキラが飛びすぎて全然忍べてないんですよね。
謙信さんに気を遣わせないように頑張って隠れようとしてるのは分かるんだけど、バレバレっていう。
たまにキラキラにハートが混じってるっていう。
忍者がそれでいいんですか?
もちろんいいんです!
かすがならいいんです。なんでもありです!
そんなところもかすがの可愛さの一因だからね!
一般人には(なんでか)バレてないからまったく問題なし。
しかし、それにしても…
『(…めちゃめちゃ人多いし!なんで!?時間帯!?それともすごい活気のある国なの!??)』
俺、戦国時代とかってもっと穏やかで、悪く言えばさびれてるのかと思ってました。
すいません!ちょっと見くびっててすいません!俺、戦国時代甘く見てました!!
『(な、流されるっ…!!誤解は謝りますから頼むからもうちょっと周りの人数、減ってくださ…)……!』
っておい!!!誰だぁ、今謙信公にぶつかりやがった奴は!?
少し前を歩いていた謙信公がちょっとたたらを踏む姿を、ストーカー並みにガン見していた俺が見逃すはずもありません。
すかさず手を伸ばして支えたものの(接触のチャンスとか思ってませんよ?)、そんな不敬を働いた男には思わず殺意が湧きましたね、ほんと。
『(てめぇこの野郎ふざけてんなよ謙信公が目に入らなかったのかよ、このオーラ漂う神の芸術が?節穴か?お前の目は節穴なのか?そうだな?だったらその穴井戸でふやけるまで洗ってこい。そして眼科に行け。今のでもし謙信公がお怪我でもしたらどうするつもりなんだよ、あぁ?そんなことになったらお前ただじゃ済まさねえぞタコが!俺の女神は華奢な方なんだよわかってんのかコラ。今も思わずさすりたくなるような細いおみあしがよろけてたろうが!!万に一つ転びでもしたらてめぇ今頃海の底だったんだからな。その覚悟あっての事だろうな?だいたいそんな汚ぇ着物が触ったら清浄さあふれる謙信公にばい菌がつくだろうが!その足りなそうな頭かち割って中の豆腐に筆で直接書き込んでやろうかおい、なんとか言えっつうんだよ自分の犯した暴挙の重大さを理解してんのか?できんのか雑魚Aさんよ…?)』
「しゅん」
…おおっとー、はいはいなんでしょう謙信公。はっ!もしやどこか痛むんですか!?なら今すぐ俺が抱きしめ…じゃなくて抱き上げて病院までお運びしますよ!?
「もうきぜつしていますよ」
…………え?
言われてもう一度あのどうしようもない馬鹿者を振り返れば。
……あれ?本当だ。おかしいな、まだ睨んだだけで一発どころか文句の一つも言ってないのに……………あ、なるほど天罰か。
きっと謙信公の普段の信心を天帝さまが汲んでくださったに違いないですな!
さすが謙信公!!
ありがとうございます天帝さま!
「さきほどはありがとうございました」
え?さきほど?………ああ!支えた件ですか!?
いやいやいやあれは自分の欲望…じゃなくてえーと、したいようにしただけですから!全然謙信公にお礼を言っていただくほどでは無いのですよ!本当に!
『(むしろそんな清い笑顔で言われると後ろめたい部分が…!)…普通だろう(ということにしておいてください是非!)』
「ふふ…では、あまいものはおすきですか?」
…?ええまぁ…普通に好きですが。
突然なんだろうかと思いつつ頷けば。
「おれいによいかんみどころをおおしえしましょう」
人差し指を立てて内緒だよって…!!
っもー!あなた年上なのになんでそんなに可愛らしいんですか!!犯罪的なんですけど!!?そんなこと往来でやっちゃいけません!さらわれちゃいますよ!(俺に)
『(やばいやばいやばいやばいやばい…予定通りこのまま二人で買い物とかぶらぶら歩いたりとかしたら俺、本気で犯罪者になってしまう…!そんなことしたらかすがに殺され………はっ!!そうだよかすがだよ!)…かすがも一緒に、な…(お願いします、うんと言ってください!)』
必死に頭を働かせてそう言えば、ちょっとびっくりしたみたいに目を開いた謙信公。
でもその後にふわっとそりゃあもう優しく微笑んで(ああ!もうまた…!天然は本当に心臓に悪いですよ!)
「しゅんもきづいていたのですか。やはり、しゅんはやさしいですね」
では後で呼びましょうと笑って歩き出した謙信公。
ふぅーーー…これでなんとか一安心!!!
俺は新たな美人という強力な理性を手に入れられそうです。内心胸を三百回くらいなで下ろしましたよ。
だっていくら俺でもかすがの前では何もしないはず!かすがにまで嫌われたく無いですからね!
この二人に嫌われたら世界は味気ないですよきっと。絶対。
しかし…謙信公とのお出かけは最高ですが、俺にとってはいろんな意味で大変ですよ。
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