Talk about luck.





※視点がものすごい変わります。ころっころ変わります。
読みにくくてすいません。





* * * * *






手の中には金の指輪。

理由はよくわからないけど、なんか朝起きたら握っていたわけで。

細い金属の穴から周りを透かして見ていた時、穴の向こう側に紙を発見。文机の上にぺらっと一枚。
それを手にとって読んでみたら。


『………』


…どうやらこの指輪は天帝さまからのプレゼントらしいです。
俺の好きな相手に嵌めてあげると、何か良い事が起きると書いてありました。

もう一度指輪をまじまじと眺めて首を捻る。


『(……Oh my god!いやだって今使わないでいつこの言葉を使いましょう!?ビバ私の神さま!!)』


もしかしなくてもこれはすごいラッキー?さすが天帝さまと感涙にむせび泣く場面じゃないですか?


だって今日は我が最愛のお花ちゃんのお誕生日なのです!!!


…しかし悲しいかな、俺はしがない居候。
バイトもできない戦国時代では自由に使えるお金はないわけで。プレゼントとかろくに用意できなかった訳ですよ!

俺のお花ちゃんだというのに!!

(まあ、この世界ではお誕生日っていう概念はないっぽいですが。)

ともかく飴玉くらいなら気分的に買ってきてもらえる範囲内だけど、いくら俺が図々しいからってさすがにプレゼントとかまでは用意してもらえないでしょ?


それを踏まえた上で!


今俺の手の中には指輪!ゴールド!ちゃんとプレゼントらしい高価な物が!!


さ・す・が!天帝さま!!!


俺の悩みを汲んでくださるなんて…!本気でありがとうございます!ごく平凡な普通人の俺にこんな細やかなお心遣い…これからも毎日感謝させていただきます!


あ、おタケさんおタケさん!ちょっとお花ちゃん呼んできてください!ついでにその辺の人払いなんかもよろしくお願いします!!





* * * * *






「失礼いたします」


タケに、舜様がお呼びだと聞き、急いで参じたものの…何度経験してもこのお部屋の襖を引く時だけは慣れんな。
舜様にお会いできる喜びの半面、叱責の為に呼ばれたのではと思ってしまう。細心の注意を払っておる故、心当たりはないが、やはりあの方は常人とは思考の巡らせ方が異なっておられるから…。

だからこそ開けた瞬間、こうしていつも通りの穏やかな双眸を拝見できると、胸の奥から喜びと安堵込み上げて来るのだ。


『元就』


襖を開けてお花ちゃんが入ってきた瞬間から、もうまわりの空気が違います。輝いてるっていうかキラキラしてるっていうかなんていうか。

本当にマイナスイオンとか出てるんじゃないでしょうか。元就には絶対空気清浄能力があるに違いありません。

だって俺めっちゃ癒されます。ほんと見るだけで。そこに居てくれるだけで!


すぐ隣に座る元就に飽きることなくキュンキュンしながら、その膝で揃えられた手を見て。

ふと、


『(…指輪…って、どの指につけてもらうべき…?)…………』


どうしたのだ…?舜様が視線を落としたまま動かなくなってしまわれた。

な…何か粗相があっただろうか!?

御気分が優れないのだろうか…しかし、なんだか我の方に目を向けておられるような……座り方がお気に召さない?いや、常と変わらないはずだ。では、慌てていた故空手できてしまったのが不味かったろうか…普段ならばお茶の一つもお持ちするのだが……はっ!?もしや着物がご趣味でないのでは!?舜様は雅なお方だ、有り得る…!
今朝もタケと相談して選んだのだが…やはり萌葱の物にするべきだった…!今から着替えに行こうか…しかし、まだ舜様に呼ばれたご用も聞いていないのに退出するなどできん…!だが、いややはり…

……駄目だ…!我には決められん!

ともかく舜様のお考えを聞いてから判断を下そう…。


「…舜?」


…は!フリーズしてた!
元就に不思議そうに覗き込まれてる!

呼んだくせにほっとくなんて俺最低じゃないですか!
でも小首を傾げる元就も可愛い…。

じゃなくて!

いやね?だってね?今の今までそのつもりだったけど、左手の薬指じゃあ意味深すぎ?とか思ったんですよ。重い?でもこの世界だったら意味なんか誰も知らないからいいよね?けど政宗とかなら知ってたり?なら右手?いやでもだったら尚更左手につけてもらって、“俺の”アピールをするべきなんじゃ?いやいやいや流石にそれは気持ち悪すぎ?束縛しすぎ?でもそれも今更でしょ。俺って既にめちゃめちゃ束縛しちゃってるし。とはいえやっぱりお花ちゃんに嫌われたら元も子もないし?いっそ小指?それか中指?だってこの指輪、はめた指に合わせサイズが変わるって紙に書いてあったし…とか思ったんですよ!色々と考えてしまったのですよ!

でもそれって元就を待たせる理由には全然ならないのです。はい。
ごめんねお花ちゃん!ほんと全然なんでもないよ!そんな心配そうな顔してもらうような事はさらさら全くないんだって!!


『何でもない(つか放っておいてごめんよ!)』


そう言って再びその双眸と向かい合う。
良かった…確かにお気を悪くされてはいないらしい。普段と変わらない穏やかで心地の良い威圧だ。

どうやら、我の杞憂だったようだ…。舜様の事に関してはどうしても不安が先に立ってしまうな。舜様にもご迷惑だ、気をつけねば。

だが、ならばまだ我は舜様に見放されたわけではないのだな…良かった…!日輪よ!そなたのおかげぞ!!舜様の栄光の為にもこれからも欠かさず崇める故………?

え…あ…、舜様…?な、何故我の手を取っておられるのですか…?


「!…舜?」


やっぱり何でもなくはありませんでした。

ちょっとだけ手貸してください元就さん!変なことするけどしないんで!俺変態っぽいし下心もあるけど警戒しないでね!傷ついちゃうよ!

膝の上に置かれていた元就の手を持ち上げると……って指、ほっそー!
武将とは思えないくらいすごい綺麗な手なんですけど!
こりゃ白魚だって沈んじゃうね!恥ずかしがるに違いないね!

俺はその見本みたいな手の、左手の薬指に、これまたちょっと有り得ないくらい綺麗な指輪を通します。
走馬灯に勝るとも劣らない早さで脳内会議が開かれた結果、やっぱり薬指にはめさせていただくことにしました。

だってどうせ誰も意味知らないんだから俺の自己満の範疇じゃないですか。なら目一杯満足したいじゃないですか!

でしょ!?


『…これは』


舜様の御手に我の手が乗せられている…!?だが愚かな混乱など意に介すこともなく、長く整った指が我の指に細い金属をつけて離れる。

滑るように嵌められたそれは、生涯目にしたこともないような、一目で価値のある品だと知れる逸品だった。

舜様がこのような素晴らしい物を我などに手ずから…!
何と栄誉な!我は夢でも見ているのではないだろうか!?

…だが、我はこれをどうすれば……いつお返しすれば良いのだろうか?この繊細さ…無理をすれば直ぐにでも壊してしまいそうだ…。


『ずっと、着けていて欲しい(お誕生日おめでとう、お花ちゃん!今はこれが精一杯!でも本当におめでとう!)元就の為のものだ(天帝さまの粋なおはからい、最高です!)』


さすがに天帝さまからの頂物だけあって、シンプルなのに他のなんかとは全然ちがう素敵さなのですよこの指輪は。元就の指に納まるともー、ほんとにぴったり!誂えたみたいなのさ!!ミケランジェロだって絶対こんな美妙な形は彫り出せないね!!

ああ本当にすごいなこの指輪。つけただけで元就の輝きが一段増したよ。本物の花顔負け、ってか比較になりません。まさに解語の花!人類の至宝!目がくらみそうだぜ!!


『……よく似合う(頑張れ俺の理性&意識!とりあえず今だけは飛ばないで!!)』


そんな……我などがこのような物を頂いて良いのだろうか…!?
しかし、身を竦ませるより先に、舜様がそう言って微笑んでくださったのだ…!

その芳香が薫るような神々しさに、未だ預けたままの手が熱い。顔も胸も熱くないところは無いほどで、歓喜に震える体を抑える事ができなかった。

深い感動を噛み締めながら、眼前で満足そうに微笑まれている舜様に、早く返答をしなくてはと回らない頭を叱咤する。

そうしてやっと返せたのは、我ながらなんとありきたりな言葉だろうと悔悟するようなものであったが…。


「…我などには勿体無いお言葉です…!(嗚呼!何故我はこんなにも言葉が足りんのだ!このような台詞では、思いの片鱗すら伝えきれぬではないか…!!)」


おおっとー、目の前で切れ長のおめめがうるうるしてますよ?俺の理性に300のダメージ。

じゃなくて泣かないでねお花ちゃん!せっかくのお誕生日なんだからね!?笑って楽しもうじゃありませんか!!ね!?

ああでも喜んでもらえたみたいで良かった!やっと俺も一安心………っお花ちゃん!!!そろそろその熱視線を逸らしてください!そんなに喜んでくれたのは嬉しいけど、俺の吹けば飛ぶような理性が…!!!ひそめた眉が!!ダメージが!!!…お花ちゃ〜ん…!


…………………。


……………。


………。



『…俺の…な』


「(!!!??)」





















〜反省文〜

理性と本能の激しい葛藤があったあたりから約三分間、俺の意識は途切れていました。(たぶん)

そして気付けば、目の前にはりんごのように真っ赤になった元就さんが…。
半フリーズ状態になっていたお花ちゃんに、どうしたのか尋ねても恥ずかしがること尋常でなく。
俺が何かしでかしてしまったらしい事だけは理解できましたが、何をしてしまったかは、結局わからず終いでした…。


………俺!お前お花ちゃんに何しやがったんだよ!!!
せめて記憶くらいは残して行けよ!!!!!
残念すぎるだろ!!!




…追伸.指輪をはめると起こる良い事は、結局まだよくわかりません。





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