もしもシリーズ。by松永軍





《もしも天帝さまのお使いが手違いをしていたら…?》


→うっかり松永軍に拾われていたかも。


〜〜〜〜〜〜〜〜


「そこをどきたまえ」


「………(ブンブン!)」


頑張れ小太郎…!そしてあわよくばその人を追い返して!!


あ…、どうも香月です。
なんか俺天帝さま、平たく言えば神さまに好かれてて、まあいろいろあってつい最近このゲームの世界に来たんです。

来たんですが……


なんでここ!?天帝さまのお考えがちっとも理解できません!俺天帝さまに愛されてるってお話でしたよね!?

正直俺この城嫌です!!てか無理です!
もしかして愛故の試練ですか!?千尋の谷的な?厳しすぎません?


「…やれやれ。舜、卿からも言ってくれないか」


入り口の近くで小太郎にガードされているナイスミドルがこのお城の君主様、松永久秀さんでございます。
この世界で俺を保護してくれてる親切(?)なお方。
まんま偉い人って感じのオーラが惜しげもなく漂ってて、風格とかもあって普通に格好いいです。

しかもありがたいことに、俺はこの城主さまに気にいられているみたいですよ。


まあ、それは良いとして。
ええ本当に。
そこまでは大変良いんですが!


なんか怖いんだよねこの人!!

言うことはさらっと物騒だし、行動突飛で読めないし、そもそも君主様の威厳自体が一般ピーポーな俺には荷が重いのです!

なのに俺、この城に来てから一日の半分は確実にご一緒させられてまして!

尚且つ松永さんからは悪戯(いじめ?)ばっかされて、むしろ俺って暇つぶしのおもちゃだと思われてんじゃないかと思わずにはいられないんですが!
手頃なストレス解消ですか!?
弱者をいじめるのは良くないと思います!


「私が卿を害するわけがないだろう?」


いやいやいやいやいやいや!きれいな笑顔で大嘘ぶっこかないでくださいよ!?それとも松永さんにとって今までのはごく普通のコミュニケーションだったとでも言うんですか!?
一日に三十回も着替えさせられたり、一日中おんなじポーズをとらされたり、その他諸々あんなことやこんなことが!?

そんなわけないでしょ!!

今だって笑ってるけど、俺には黒さがちらついてるようにしか見えませんから!このどSさんめ!思い出しただけでちょっとげっそりしますよ俺は。

小太郎はよくあんな怖い人とまともに向かい合えるなぁと感心してしまいますよ本当に…。


「舜?」


しかし気に入っていただいてるとは言え所詮俺は客人、城主さまの希望には逆らえません。てか、松永さんはそのことを十分理解した上で仰っているに違いないのですが。
だからこそ小太郎に邪魔されたくらいじゃ何とも思わないのでしょう。確かにささやかな抵抗なんですけどね…。


『……小太郎』


パワーバランスに逆らえない俺は、ため息混じりに小太郎の名前を呼びます。


「…!……、…」


驚いて振り返る小太郎に目配せすると、しぶしぶながら退いてくれました。
もー、なんて良い子なんだろうこの忍は。
そうやって心配してくれる君に俺は日々の癒やしを感じているよ。君だけがこの城最後の優しさだよ。

俺だって本当なら唯一の聖域を手放したくなんかないとも。ないともさ!

しかし如何せん居候の身では立場が弱いのだよ…。


「あれはすっかり卿に懐いてしまったようだ」


すでに消えてしまった小太郎(味方)が、たった今までいた場所を未練がましく見つめる俺。
小太郎(障害)がいなくなったのに満足したのか、若干上機嫌めにそう言った松永さん。


『(…うん?)』


結局いつも通りの展開になってしまうのかと、半分諦めかけていたら。

普段二人でいる時に座る位置をあっさり越えてきた松永さん。
ええー…またなんか(いらんこと)思いついちゃったんですか?今度はなんですか?入って来るなり…つか、またずいぶん寄りますね…って近!!

近いですよ松永さん!?そこで座ったら二人の膝がくっついちゃいますよ!?


『(…本当に座っちゃうし!なに企んでんですか!?真面目にいやな予感しかしないんですけど!!)……?』


「そのまま大人しくしていてくれたまえ」


出来るもんなら全力で逃げ出したい…!
でもなんかこの人に言われると逆らえません!だって怖いから!!


『(…?…ちょっ、目は塞がないでくださいよ…さすがに怖いか…っ!!!??いったあぁーー!!??)……痛い…』


耳元でぎちりと音がして、同時にものすごい激痛。思わず声にまで出ちゃうくらい痛い!!痛いですってまじで!!!千切れた!?千切れてない!?血とか出てそうな痛さなんですけど!!?

何!?なんで俺耳齧られたの!!?


「いや失敬。どうしても卿の泣き顔が見たくてね」


俺の視界を塞いでいた手がどかされると、ちょっと有り得ないくらい良い笑顔と目が合った。

いや、そりゃ合うでしょうよ!
だって顎掴まれてめっちゃ覗き込まれてるし!


「…ふむ…この程度では見られないか」


そんなこと言われてもしょうがないでしょ!?鍛え上げてしまったせいで俺の涙腺はすでに詰まっているのです!表情筋とおんなじように鋼の硬さになったんですよ!!
こんな事くらいではうるっともしません!残念ながら!

てかそんな理由で俺、耳齧られたの!??
当たり前みたいな顔してますけど全然当たり前じゃないですから!俺表面上は無反応ですけど内心はこんな感じに叫びまくりの反応しまくりで、失敗残念だったね涙出なくてごめんねとか言えないですよ!?

そんな考察よりもっと申し訳なさそうな謝罪が欲しい普通の人間なんですけど!??


「次は別の手段を考えるとしよう」


『(ちょぉーーっとぉーー!!??もしかしなくても俺が泣くまでこのいじめは継続ですか!?冗談じゃないし!いやいや冗談じゃないし!!有り得ない!!本気でそれは有り得ない!リアルにやめてくださいよ!!!??まじで勘弁…!!)…嫌だ』


「なに、次も痛みを伴うとは限らないよ」


俺の精一杯の抵抗もどこ吹く風。愉しげに流されてしまいました。

ですよね…。言ったって止めてくれないよ松永さんは。そういう性格だって事くらい俺も学習しています…。
自分が満足するまで追求されるお方ですとも。

いじめ終わったばっかの今だって恐らくもう次の企みを考えはじめているに違いありません。


「次はどんな方法がお望みかね?」


…こんな気にいられ方なら気にいられないほうがましだよ!構い倒すならせめて別の方向にしてください!



俺もうやだこの城…!

天帝さま!なんでこの軍なんですか!?

小太郎でも誰でもいいから、誰か俺を攫ってください!!





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