女王バチ13匹目





…最近、見るからにお花ちゃんの元気がありません。

どうしたの!?

すっかりしおれちゃってるよ!!?

さすがに俺に飽きた!?

依存しすぎちゃいました!?



……一大事です…!これは早急に手を打たなければなりません!


仕事を終えていつも通り、わざわざ俺のところに来てくれた元就を近くに呼ぶ。
どこかその座り方にもよそよそしさがあって、自分でも驚くほど愕然とした。

でも!ここで挫けたらみすみすお花ちゃんを手放すことになりかねません!

めげません…めげませんよ、俺は!


『どうした』


「…え…?」


『何で悩む』


今日の俺はかなり積極的。
だってやっぱり必死だからね!

やっとこっちを見てくれた元就も、この変化にびっくりしているらしく、切れ長の瞳がぱっちりと開かれた。

それなのに、すぐにそれが伏せられてしまう。


「…すまない…そなたを、煩わせる程のことでは…」


嘘がヘタだよお花ちゃん。
俺の変化にはすぐ気付くくせに、自分の戸惑いっぷりにはまるで無頓着じゃないのさ。
俺の厚かましさが原因だって顔に書いてあるようなもんだってそれじゃ。

『隠すな』


言ってくれたら善処するし!直せそうならできるだけやってみるし!!

だから正直なとこを聞かせてよ?


頼むからと念じるような思いを込めて見つめる。元就はこっちを見てくれてはいないが、それでもしばらく悩むようにした後で、根負けしたみたいに話し出す。


「……その…大声で言えた話では、ないのだが…」


目を合わせくれないままおずおずと口を開く。
確かに人の欠点なんて指摘しづらいよね。まして元・信仰対象だし。元就優しいし。


「…我は、本当に舜の役に立てているのだろうかと思うと…不安で仕方ないのだ…!」


……はい?


「以前に比べ、近くにいられる時間もとることが出来ず…」


身近でお仕えできませんと言って、お花ちゃんはひどくしょんぼりした様子でいます。
舜くんはびっくりしてしまいました。
だって、そんなことは少しも考えていなかったからです!

…絵本風にナレーションを入れてみたりするくらいには混乱してるよ。俺は。


「それに引き替え…風魔は情報を集め、その上で舜の為に常に傍で控えていて…」


『………』


「不甲斐ないこの身が情けなく…、それなのに見当違いにも風魔を妬んでしまう己の浅ましさが愚かで、舜にあわす顔がない…」


…そん、なわけないでしょー!!!??

今だって隣に居てくれるし(そりゃ居ないときはちょっとは寂しいとか思っちゃったりもしたけど)、側にいられない時だって仕事してるんだししょうがないじゃん!?この国が傾いたら元も子もないよ!元就も俺も困っちゃうでしょ!?
そんな元就がそんなこといったら他の誰が役に立ってるって言えんのさ!!


「だというのに…未練がましくも、そなたの傍に行きたいと思うのも…止められない」


役に立ってるから!十分すぎるくらい俺、助けられてるから!めちゃめちゃ感謝してますよ、本当に!
あんまりそう見えないかもしれないけど!

だからもう側に来ないなんて言わないで!?


「…だからこそ我は…、もっと舜の役に立ち…気後れすることなく、そなたに会いたいのだ…」


肩を震わせ、儚げにうつむいて顰む姿は西施もかくやという美妙さ。佳麗秀逸にしてまさに傾国の再来としか思えないような情景だ。

…て、のんびり解説してる場合じゃないですね?
元就泣いちゃってるしね!?

ひざの上に置かれた両手の指が、白くなるほど握りしめられてる。そんな深刻なことじゃないよたぶん!

俺の役に立とうとしてくれるのは嬉しいけど、俺の役に立っても全然意味ないし!もう十分すぎるくらいだし!


『…元就』


今のままでありがたいんだよ?そりゃもっと一緒にいたいのは俺だって同じだし、そうできるならしたいけども…
元就が無理するのは絶対ダメ!その方が俺は堪えられないから。


『側に居れば、いい』


仕事を俺の部屋でしたらいいんじゃない?俺はお花ちゃん見てるだけでも楽しいし。
それくらいならあんまり負担にもならなそうだし?


『それだけで良い』


「……舜さま…」


それだけで完璧だからね?

表情筋を目一杯動かして誰が見てもわかるようにしっかり笑う。いくら元就が聡いと言っても、こんな時くらいはさ。


『わかるな?』


「……はい…!」


それでちゃんと安心させられたようで、さっきよりも泣いてはいるけど、寄せた眉の下でほころぶみたいに笑うからほっとした。





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