女王バチ10匹目





珍しく一人で部屋にいる香月舜です。

いやね?さすがにここは元就の城じゃないですか?城主さまでしょ?

やっぱり前より忙しいんだよねお花ちゃん。
だからあんまり構ってもらえないんですよ。

まあ、ザビー城と違ってここではダメージを受けることもないから大丈夫なんですが。

つっても前よりってだけで、普通に考えれば一日の半分も一緒にいれば十分なんだろうけど。
俺としては今までが今までだっただけにちょっと寂しいし、ヒマなことには変わりないわけで。


そんな感じでボンヤリと窓の外を眺める俺。

にしても、高松城の最上階から見る景色はほんと最高。目の前を過ぎる景色はどんだけ見てても飽きないね。

だって景色は俺がなにもしなくても勝手に移り変わってくれるんですよ?素晴らしいでしょ!?こんな便利なもの他にないよ?

というわけで観察(という名のボンヤリ)は俺の趣味だからさ。この部屋をあてがってくれた元就には本当に大感謝。


…そんな素晴らしい視界の中、さっきからチラチラなんか動くものがあるんですよねー。

黒い影…?

森の中だし動物かとも思ったんですが、ちょっと速すぎる気もします。
だって俺、自分でも目で追えるのびっくりするくらいの速さなんだよ?
鳥にしたって速すぎるでしょ。

しかし俺こんなに動態視力良かったんか…
さすが天帝さま…ありがたい(?)なあ。

そんなこんな考えてる内にも影は城に寄って来てる。(ように見える)


『(あれ…まずい…かな…?)』


味方…なのか…?元就の部下とか?

でもどうも、そんな感じじゃないし…
て、オイオイ…早いね。もう城に…き…て……って

天守閣!?

はやいよ!はやすぎ!
下から上まで登ってくんのに三秒かかってなくないですか?

すげー…人間か?でも人間じゃなかったら嫌だ。


あー…どうしようかな。

音も何にもしないけど、多分あの辺にいるんだろうな〜、ってのがわかってしまいます。

これが気配ってやつ?すげー。
前の世界より俺、性能がアップグレードしてるよ。天帝さまの愛ゆえに?
俺万能説浮上。やや濃厚ぎみ。


脳内の混乱はさておき、相手(あくまで人間であると推しますよ俺は!)が居るだろう場所を見上げる。

と、いっても面倒だから目だけで。


…と、いっても天井しか見えないけど!


当然です。いくら何でも透視なんかできないし。
でも放っといて俺はともかく、俺のお花ちゃんが危ない目にあったら嫌すぎます。
何しろあの愛らしさだし否定しきれないよね?

誘拐なんてされたら俺、泣いちゃうよ。


『おい』


苦境の俺を救ってくれた命の恩人だし。
あ、比喩じゃないですから。


『降りろ』


とりあえず天井に向かって話しかけてみます。これで気づかれたと思って帰ってくれるのが一番なんだけど…

わー…素直に降りてきちゃったー。


ちょうど正面に降りてきたのは、目を隠した…忍者?ちょっと俺の忍者イメージとは違うけど、なんかでかい手裏剣とか持ってるし。
赤い髪とかペイントとか目立っちゃっていいんですかね?


なんでこんな悠長に観察できてるかって?

だってなんか俺の能力とか全体的に上がってるっぽいですし。実力は未知数とはいえ面倒くさがらなけりゃ色々と平気な気がするんですよ。

さっきのこの人の動きも目で追えたし、一応逃げるくらいならできそう。

…なんてちょっと楽観的すぎ?
いやいやいけますって!人生は信じる事からはじまるんですよ。たぶん。


『何をしに来た』


直立不動の忍者さんにかなり直球で聞いてみます。

結果は当然、沈黙。
まあ、教えてくれたら逆にびっくりだよね。

つかでも、答える気ないなら出てくんなっつの。
降りろって言われて降りてきたんならなんか反応しろって話ですよ。反応しないなら帰れとまでは言わないから、せめて降りてくんなよな。


なんて内心では文句とか言いまくりの俺です。

だってせっかく面倒をおしてまで会話しようとしてんのにさ?

あー次もどうせ答えないんだろうなー。
だったら質問するだけ無駄じゃね?

質問すんの面倒くさ…


とかふてくされながら考えたらあまりの面倒くささに、この100%不審者から目を逸らすという愚行をしていました!無意識でした!

俺は自殺志願者か?見てなきゃいざって時に逃げらんねーよ?

でも仕方ない。

だって答えてくれそうな質問を考えるのも面倒なんだしぃー。


「……!…」


半分投げやりに目を逸らし続けていると、なんか忍者さんが反応したっぽい。
見れば、喉を押さえて口をパクパクさせている。


…あぁ、なるほど。

答えないんじゃなくて答えられない。
声が出せない人なわけね。

そりゃ失礼しましたよ。
内心の数々の無礼を許してください。

横目で部屋に文具があるのを確認する。
俺はこの世界だと読み書きできないから要らないもんだったけど、今だけはあって良かった。


『選べ』


筆談か帰るかを。

いやさ?やっぱりおとなしく帰ってくれるのが俺としては一番楽なわけでね?
俺こっちの文字ほとんど読めないも同然だしね?解読するのも手間がかかるわけさ。

というわけで

俺のいち押しは帰るっていう選択肢なんだけどどうだろう?


「…!!…」


そんな期待を込めて聞いた瞬間。

すぐさま膝をついて手をついて土下座してしまった忍者さん。


おおぉい!!!どういうことっ!!?


誰か俺に説明して!!





- 11 -


[*前] | [次#]
ページ:




目次へ
topへ



「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -