女王バチ9匹目





相変わらず俺のお花ちゃんこと元就と一緒にザビーの魔城に軟禁状態の香月舜です。

…真面目にもう限界です!

そりゃあ元就は美人さ!俺の癒やしかつ回復薬さ!おおいに助けてもらったとも!


で・も・さ!?


癒される端からダメージ受けてたら全然意味ないじゃん!!?

元就は常に、冗談でなく本当に四六時中隣にいてもらってるけどね!?ザビーの野郎も暇さえあれば俺の部屋にくんだよ!

来んな!まじで来んな!!!


と、いうわけで。


我慢できなくなった俺は脱走を試みます。
ワァ!我ながらなんてアクティブ!
ザビーは本当に俺に色々な経験をさせてくれるなあ!!まったく…

…さて、俺の地道なリサーチにより(何しろ話しかける度に元就が照れて仕方ないので)元就の城はそのまま残っているらしい事が判明いたしました。

これを利用しない手はありません。ありませんよ皆さん。

普通のお城と普通の殿様に囲まれたら気まずいかなーとも思ったけど、それより限界の方が先にきてしまったのでその辺は考えないことにします。しましょう。



〈中略〉



そんなこんなあって、まあ時は満ちました。

ザビーに秘密裏に進めるのは苦労したけども、その甲斐あって現在俺は海上で波の揺れを満喫中。

ええ、もう逃走中。



清々しい…

かつて、この人生においてここまで晴れやかな気持ちを持った日があっただろうか?

いや、無いね。


これも全て、何から何まで周到に準備をしてくれた元就のおかげだわー。

ほんと、元就様々!
ありがとう元就!素晴らしいぜ元就!!

さすがにこんなにしてもらっちゃったらさ?いくら俺がものぐさとはいえ、お礼をしないわけにはいかないよ。

…まあ、俺に出来ることなんかたかがしれてるけどね。
気は心ってやつよ。

そんなわけで


『元就』


さっそく聞いてみます。
もちろん元就は俺の隣にいるさ。もう側にいるのが当たり前になりつつあるからな。


『助かった。ありがとう』


「…!、いえ当然のつとめでございます故…」


礼を言っただけで赤くなってうつむいてしまうところがいい。ザビー城にはなかった日本の美だね。


『礼をしたい』


顔を持ち上げ、まっすぐ目を見てそう言えば、途端に目がまん丸くなるところもまた可愛い。
てかもう元就なら何でもいい。
(※俺はゲイじゃないぜ!!今んとこ)


「そんな…!勿体なきお言葉…!褒美など、値するようなことはしておりませぬ!!」


慌ててるところもいい(くどい?)

はっきり否定されてしまった。
でもこれは想定内だぜ!遠慮がちな元就なら(どっかのハゲと違って)はじめから簡単に受けてくれるわけないと思っていたさ。


『礼を、したい』


しゃべるのは億劫だが、今日は元就がうんと言ってくれるまで説得してみせますよ、俺は。


「しかし……!」


尚も食い下がる元就をじっと見つめる。(さっそくしゃべってないけど!)

でも元就はこれが結構効くんだよね。
今もみるみる困っていくのがはっきり分かる。(悪趣味?)

揺れてるね。
ここで駄目押しにもう一声。


『元就』


「…!……では…ずっと、舜様のお側に置いてください……」


ついに陥落したと思ったら。

何それ?それが元就の欲しい褒美?

いやいやいや!
それは九割以上俺の望みですから!!
全然元就の褒美にならないし!

むしろ俺の褒美だよね?


『駄目だ』


「…!!」


だって俺はもう側にいてもらう気満々だから、元就さえ居てくれる気ならそんなのもう叶ってるようなもんだし。

全然今回のお礼にならないね。


『初めからそのつもりでいる。褒美にならねぇ』


「…え…?」


『他には?』


「…他に…と仰られましても……思い付きませぬ…」


えーうそん。本気ですか?
俺何でもしちゃうよ?(今回に限り)
掃除でも洗濯でも頑張りますが?

でもまあ、元就ならもうそういうののプロがいるのか。やっぱり俺の出番なさそうね。


「…申し訳ありません」


うわ謝らせちゃったよ!これじゃ逆効果じゃん!!どうする!?

元就が慎ましくて身も心も美しいのはわかったけども、思いつかないってのは困ったな…。

…仕方ない。
とりあえずこの場は唯一思いついたことで勘弁してもらうとして、後でなんか元就の喜びそうな事を考えよう。それしかない。


『元就』


俺としてはこんなんでお茶を濁すのはかーなーりィー心苦しいけどね!?他に思いつかないからね!?


『様を外せ。敬語もいらねぇ』


だって、元就なんかやけに下から目線だからさ。

いやはじめの信仰対象的な刷り込みが原因なのはわかってるけど!

何度言っても聞き入れてくれないし。

本当は全然元就の方が偉いんだけども、信仰対象にタメ口なら多少は良い気分になったりすんじゃないの?


「…!…そんな!恐れ多い…!」


いやいやいや!

全然恐れ多くなんかないんだよ御当主。
むしろぬけぬけとこんな提案をする俺の方が恐れ多いから。

とか言ってじっと目を見る。
…ちょっと俺、本気で卑怯!ごめん!ごめんな元就!ちゃんとしたお礼もするから!!

いづれ!!


「……!……ならば、努力…する」


律儀な子!だんだん尻すぼみになってるけどちゃんとため口だよ!!可愛い!


『名前も』


調子に乗ってそんな要求までしてしまいました。

駄目だ。
これじゃまた十割俺のご褒美じゃん。
早めになんかちゃんとしたの考えよう。

でも今は聞こう。


「……………舜…」


やばい。本気でやばい。

俺がやばいってこれ。キュン死にする。

だってうつむいて顔真っ赤にしてめっちゃ小声で俺の名前……!!

可愛いすぎて不味いって、犯罪起きるよ!
不味い…不味いね本気で…
真面目これ俺、元就ならイケてしまうかもしれません。


…踏みとどまれ、俺の理性!

頼むぜ!!!?





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