女王バチ8匹目
ザビーの魔城にお花が咲きました。
…というのはまあ、冗談ですけども。
俺の気分的にはそんなかんじなんですよ。
美人だし、トンスラ集団の中に唯一俺と同じで髪のある人だし。(お花ちゃんの部下はトンスラじゃないけどね)
それから、お花ちゃんの名前は毛利元就さんというそうです。
…有名人じゃね?
俺、天帝さまのおかげで記憶力とかもいいんですよね。だから世界史専攻とはいえ、日本史も全然覚えてますよ?
有名人ですよね!?お花ちゃんとか呼んでる場合じゃないよね!?
さ・す・が、ゲーム!!
でも呼ぶけど。
だってかわいいし。純和風美人。椿みたいな?
連れて帰って来て以来、ほとんどずっと一緒にいてもらってるわけだけど、たまに俺の方をじーっと見てはぽっと頬を染める。
それがばっちり様になるから驚きです。前の世界の取り巻きも大体、綺麗な顔をしていましたが、さすがにゲームの世界は違うね。
美人度の桁が違うね。
あー…ほんと、連れて来て良かった!
ザビーとトンスラだけだったら俺、絶対逃げ出してたよ。絶対。
「舜様」
なんだい、俺の癒やし。生活の潤いよ。
下からのアングルも素晴らしいぜ。
「その…少々、恥ずかしいのですが…」
伏し目がちに顔を赤く染めるのがまた………って、俺変態みたいだけど、別に違いますから。全然女の子が好きですから。
今もひざまくらとかしちゃってるけど、単に甘やかされ癖が抜けないだけなんで。
この城、女子いないし!!
でも…たしかにちょっと可哀そうだよね。
俺男だし。お花ちゃ…じゃなくて元就も男だし。男が男をひざまくらしても楽しくないさ。
『悪い。すぐ退く』
というわけで、俺は起き上がります。元就のひざは大分いごこちが良かったけど…仕方ない。
ごめんな?この城、女の子も綺麗どころも他にいないからさ、つい君に甘えすぎてしまうのだよ。
『もう、しない』
精一杯の謝罪をこめて…って俺、そういうの表に出づらいんだけどさ。でも一応反省のつもりで顔を伏せました。
その途端、
「!?……っ…」
え?どうしたの?
突然…そんな、驚いちゃって……ちょっ、泣かないで!??
急に、そんな…ええぇ!!?
「も、うしわけ…ございません…っ、でした…」
突然の出来事にパニック状態の俺は思わず硬直。だってものすごい唐突に泣かれちゃってるし!
俺なんかいらんこと言いました!?
「…もう、二度と…出過ぎたことは申しませぬ…」
なんとか堪えようとしてるらしいけど、それでもボロボロ涙が零れてしまうらしい。押さえる手の隙間から覗く、小刻みに震えるまつげがめちゃめちゃ長い。
「だからどうか…、我を…お見捨てにならないで…っ、くださ…」
…えええぇぇっ!!!???
何!?どういうこと??!
しゃくりあげながらアンタ、何言ってんのさ!?
もしかして俺のもうひざまくらしません宣言のせい!?てかもしかしなくてもそれしかないよね!?!?
違うよ!あれは元就への気遣いこそあれ、嫌いになったからとかじゃ全然、全っ然ないよ!
大体元就の主張はこれ以上ないくらい正論で反対する隙間もないしさあ!そりゃ嫌でしょ、男をひざまくらするなんて?恥ずかしいですましてくれる君は優しすぎるくらいだって!!
『…泣くな(もー…俺、どうしたらいいのさ?珍しく気なんかつかったら超裏目…)』
「っ、申し訳…」
ひたすら謝って泣く元就にどうしたものかと必死で頭を働かす。
だから、元就さんはこれっぽっちも悪くないのよ?謝んなくていいからさ。頼むから泣き止んでください。俺の為にも、アナタの為にも!(いやさぁ、泣き顔あんまり色っぽいしさ…?こっち来て以来ご無沙汰で…ごにょごにょがごにょごにょでごにょごにょごにょごにょ…さすがに溜まってるしこの際美人なら、とか…まあ、そんな感じで俺のなけなしの理性が危ないわけですよ…)
これはまずいと感じました。
えぇ。
本気で。
だからまぁ…そんな諸事情により、最終手段に出たんですよ。
『元就』
「は……!?」
顔を引き寄せて目尻にキス。
正確には涙を吸い取ったわけですが。
これをやると相手は驚いて十中八九泣き止む。俺の偏った人生経験に基づく裏技よ。
ただし誤解されやすいから、本当に困った時しかしませんとも。
『見捨てないし、嫌わない』
いいか、と目を見て念を押す。ショック療法はその後の刷り込みも大切だからさ。
頷いたのを確認して、引き寄せていた手をはなす。
とりあえずはこれで大丈夫(な、はず)。
予想通り元就は大人しく、というか微動だにしなくなりました。
目一杯に見開いた瞳が潤んでるわ、その目元は赤みがさしちゃってるわで…もー大変さ。なにって俺の理性をつなぎ止めるのがよ。
それにしてもなんか、外見のイメージと違うなあ…。
冷静な子かと思ったけど。今も顔、真っ赤だし。結構ちょっとしたことで反応するし。
でも、ま…お花ちゃんは可愛ければ何でもいいか。
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