さようなら王子様





いつものリビング、いつもの面子。
だが、なんだってこんなに全員が集まっているんだ。


「あっらー、本当におっきくなってるよ」


「…何度見ても信じられねぇな」


「お前らねぇ…このオレを誰だと思ってんの?戻るに決まってんじゃん」


よくよく見りゃあ俊基まで。
しかも武将たちと喧嘩もしてねえし。珍しいこともあるもんだ。


「でも、もう暫く子供の大輔と過ごしてみたかったかな」


「うむ。昨日はなかなか良いものを見たわ」


さっきから俺をペタペタと触って何か確かめているらしい小太郎と、横からまじまじと眺めてくる幸村。
その二人以外にもどうやら俺は観察されているらしい。


『…何かあったのか?』


「あ?覚えてねぇのか?」


近くにいた小十郎に聞くが、逆に聞き返されてさっぱり話が見えないままだ。


「あ、大輔。これ報告書な」


俊基に投げて寄越された薄いファイルを流し読み……自分でもかなり驚いた。


『…俺は子供に戻ってたってのか』


「子供の大輔も格好良かったぜ!」


ありがとよ元親。だがそういう問題じゃなくてな…。


「原因はオレの方で解決済み。詳しくは読みゃわかるぜ」


俊基の声に内心ほっと息をつく。こういう時は流石にこいつが頼もしいな。

正面の小太郎に横に移動してもらい、パラパラとファイルのページを捲る。


「しかしな…もうちょっと子供の大輔と遊びたかったぜ。小十郎もそう思うだろ?」


原因は…十年前の木胆…?


「そうですな。結局一日しか時間がありませんでしたから」


…ああ、Y県の時に俺の名前で使ったやつか。


「確かに、一日だけというのは短すぎたね」


そういえば最近あの辺りで大きめの禍穴が生まれたな。


「一週間くらいあればみんな大輔ちゃんとゆっくりできたのにねー」


確か区域担当から塞いだと報告があったが…完全じゃなかったみたいだな。


「貴様、少しは空気を読め」


…再発防止の対応策と…


「うむ、俊基殿空気読むでござる!」


……担当者の…処置を……


「なんだとこの野郎、人が珍しく真面目に働いたってのに!テレビか?テレビで覚えたのか!?」


「いひゃいれごふぁる!」


抵抗する幸村と頬をつねる俊基。
止める佐助と呆れ顔で見ている面々。



………………………。



「どうかしたか大輔?もしかして具合悪ぃのか…?」


『…いや…、なんでもない』


心配してくれる元親に大丈夫だからと何とか返す。



…本当に、こんな調子でよく何事もなかったな。

無事に元に戻れて良かったぜ。





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