あと一曲分だけ一緒に





「大人しくその手を離しな。you see?」


「ふざけんなよ、ぜってぇ離さねえからな」


お互いにお前が離せと言って譲らない。

俺としては、二人とも離してくれるのが一番いいんだが。



「ほら、大輔も嫌がってんだろ?」


「てめぇが捕まえてっからだろうが。自分が離せよ」


俺の上半身を自分の上に抱えるようにして後ろからくっついている伊達さん。
それに向かい合うような形で、俺の足を掴んでいる長曾我部さん。

さっきまで賑やかに騒いでいた二人が、急に静かに話し合いをし始めたもんだから余計に気持ち悪い。


「てめぇはいっつも大輔と寝てるじゃねえか。今日くらい俺に譲れ」


「いつもの大輔は大人だろ?今日とはまた話が別だ」


「じゃあ大人の大輔と寝るの止めろ」


「Han?言ってる意味が分からねーな?」


…俺には話が見えねぇな。
なんで俺が男と寝てんだ?しかもいつもって。
俺彼女とかできねえのかな…。

『……あの』


「「あぁ?」」


…柄悪いな。ハモってるし。

そんな頭の上で話している二人を見上げて、めげずに何とか声を出す。でなきゃ朝までに終わりそうもない。


『俺はひとりで寝ますけど』


てか、なんで誰かと一緒に寝る前提で話が進んでるんだ。せめて普通の選択肢を用意しておいてほしい。

たとえ俺に選択権がないんだとしても。



言った途端、急に固まった伊達さんと長曾我部さん。
徐々に強まっていた腕の力も一旦きれいに抜けくれた。


「…政宗」


「ああ…どうやら仕方ねぇみてーだな…」


だが、安心したのもつかの間。
たった今までにらみ合っていた二人が、今度は目を合わさないまま頷きあう。

…なんだその意志の疎通…。いやな感じだな。


「風魔の時と同じ展開なのは気に入らねーが、三人で寝るってことで手を打ってやるよ」


は…?


「ま、それが大輔の意見ならしょうがねえもんな」


ちょ…なんだそれ…今の俺の意見は?

俺はそんなこと一言も言ってないだろうが。

だが仲良く俺を覗き込んでくる二人はもう、すっかり結託したらしい。いい笑顔で川の字だななんて言っている。
いや、こんなにくっついた状態じゃ川の字にもならないだろう。


本当に、なんで俺そんなに男とばっかり寝てんだ?

…でかくなるまでにどんな心境の変化があったってんだよ。





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