終わりをつげる鐘の音





『太陽と地球の距離はだいたい1億5000万kmで……億はわかりますか?』


頷く毛利さんを確認しながら、どうしてこんなことになったのかを振り返る。

はじめは確か普通に天気の話をしていたと思ったんだが、いつのまにか太陽の話になって、気づけば俺の太陽についての授業になっていた。


『1kmは1mの1000倍で、1mが…えーと大体このくらいですかね』


そう言って自分の胸の辺りを手で示す。身長から考えても、多分このくらいだと思う。


「では、飛行機とやらは地上からどれだけ離れるものなのだ?」


『あー…違いはありますが、ざっくり10000m、だから10kmくらいでしょう』


うろ覚えだが…。


「10きろか…」


『富士山が約3000mなんで、大体富士山3個重ねたくらいを飛んでます』


「なんと!そんなにも高いのか!」


まぁさっき出た太陽との距離に比べると些細な高さだが、人からすればかなりのものだろう。
しかし太陽か…。富士山3個で9000mだから、太陽までが……


「…だから大輔は詳しく教えなかったのだな」


『え…?』


計算を始めた時に、ぽつりと毛利さんがつぶやいた。
なんだか少しため息混じりだったような気がして反射的に聞き返す。


「ふむ…前、大輔に飛行機に乗って日輪に近付きたいと言ったのだが…。微妙な反応だった理由がやっとわかったわ」


ふぅと息を吐く。
その姿に自分がまずいことを言ったらしいと気付く。まさか自分で自分の足を引っ張るなんて思ってもなかったな。


『あ…いや……』


なにかフォローしたいが、上手い言葉が出てこない。だいたいなんで毛利さんが太陽に近付きたいのかもよくわからないし。


『…う…その……すいません』


「お前が謝ることはない。我が勝手に勘違いをしただけだ」


焦る俺を見て、不思議そうに毛利さんが首を傾げる。
いや…だけどな…そうは言っても…。


「フ…」


『…?』


「お前は幼い頃から素直なのだな」


そう言われたと思ったら、突然頬をつままれた。
両手で引っ張られてちょっと痛い。

「可愛い奴よ」


…痛いが、とりあえず今は毛利さんが楽しそうだから我慢しよう。





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