こんにちは王子様





朝起きて感じる違和感。
というよりも、単純に目を開けて見える景色が違う。


『(…なんだ…?)』


昨日もいつも通りに眠ったはずなのだが。

不思議に思いつつもとりあえず起き上がってみたが、やはり見覚えのない部屋で。
一体どういうことなんだと寝起きの頭を動かしはじめ……ようとした。

考える前にふと気付く。

隣に寝ている男。
どうして自分の隣に見ず知らずの男が寝ているのか。
まったくわけが分からない。

…分からないが、とりあえず動けなくして記憶を覗く。
どうしてここにいるのかだけでも分かれば良いかと思ったのだが。


『……………』


寝ていた男の記憶を覗いてから、覗かなければ良かったと朝から一つ、ため息をついた。





【こんにちは王子様】





『…すみません』


「…………………?」


『起きてもらえますか』


すやすやと寝ている男を揺する。気の毒かとは思ったが、仕方ない。

この人がのんきな強盗だったら、話はもっと簡単なのに。


「……!?…、!??」


『落ちついて』


起きるなりびっくりして後退った。それをぼんやりと眺めながら、なにから話そうかと考えてみる。

…まあ、自分でもよく分かっていないんだが。


『俺が大輔です』


「!!??」


きょろきょろと辺りを見回していた男が瞬間的にこちらを凝視する。


『朝おきたらこうなってたんですよ』


理由はよく分からないが。
そう言えば、恐る恐るといった感じで男側に寄って来る。そーっと手を伸ばすと、両手で俺の顔を包むようにして固定した。
そのまま確かめるように数秒間眺められて。


「………」


仕舞にはぎゅうっと抱きつかれた。


『わかってもらえたんですか?』


「……(コクリ)」


ふわふわする赤毛が頬に当たってくすぐったい気もするが、大型犬に懐かれたようでこの体勢もなんだか悪くない気もする。

ぐいぐいとくっついて来る男の人をそのままに、この後が面倒くさそうだと心の中だけでため息をついた。







(『…とりあえず、後で俊基には式神を飛ばしておこう』)





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