新年1
「………?」
「………??」
「………???」
「「「「(…ここどこ!!!???)」」」」
畳の良い香りと貼りたての障子から差し込むやわらかな朝日。洗いたてのシーツときちんと干されているだろうふかふかの布団。
さわやかに目覚めるには絶好のシチュエーションと言えるだろう。
「…う゛」
「…さいあくだ…」
二日酔いがなければ。
子供ながらに(中身は大人なので)前日の大晦日に酒盛りをしたのが相当こたえているようだ。むしろ子供姿が災いしたのか。
「起きたか」
「…っ…!」
「ぐぁ…!」
滑りよく障子が開き、小十郎が部屋に顔を出す。冬の凛とした風がこもった酒気を押し流し、同時に入ってきた眩しさにほぼ全員が目を覆った。
「お早うございます、政宗様」
「こじゅうろ…はやく、そこしめろ!」
呻くような命令を軽く無視し、携えてきた盆から手際よく湯呑みを準備していく小十郎。中身の見えない土瓶からは意外なくらい青い液体が注がれている。
「どうぞ。大輔からの差し入れです」
「…あぁ?だいすけの…?」
それを聞いて、青い液体に明らかに不審そうな顔をしていた子供らもやや表情を変える。
「酔い冷ましらしいですぞ」
実際、昨夜叩き起こされた俊基と智彰もこれを飲んで完璧な素面に戻っている。
効き目、手軽さ共に飲み屋に常備したい一品だ。
「…あじはないね」
政宗が取るより先に、横からするりと手が伸びて湯呑みを持っていく。
佐助が一口味見したようだ。
「はい、ダンナも」
「うむ…」
完全にグロッキー状態の幸村に湯呑みを渡した佐助も若干顔色が悪い。
そしてこの二人が口をつけたのを皮切りに、他のみんなもわらわらとお盆の上に手を伸ばす。
「飲んだら風呂をもらってきてください。今日は普段とは多少異なりますので」
「…それよ、みぎめの。ここはどこなのだ?」
「そーだぜ!ここだいすけんちじゃないよな!?」
大輔の差し入れのおかげか、元親の大声にもブーイングが出ない程度には全員が回復しつつある。
「ここは大輔の実家だ」
「「「「!!!!???」」」」
「昨晩のうちに大輔達が全員運んできたんだよ」
「「「「!!?!!!!???!??」」」」
「準備が出来次第、俺たちも高向の年賀に参加するらしいから早く支度しろよ」
「「「「それをさきにいえっ!!!!」」」」
実家…つまり本家に集まって行われる新年会となれば、当然大輔や大輔の両親なんかもいるはずである。
しかし既に日は高くなりつつあり、自分たちが待たせている可能性は高い。
慌てる政宗たちを風呂場に案内し、戻る途中でふと小十郎は綺麗に手入れされた庭を見やる。
「騒がしい年になりそうだ…」
ため息が含まれた呟きだったが、言った顔は愉しげに笑っていた。
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