クリスマス





「…い…おい…大輔ってば!」

『…っ!!』

いきなり腹の上に何かが落ちてきた。

…と、思ったが、実際は俊基がのしかかってきていたらしい。

『おい…ふざけんなよ…』

「だって呼んでんのに全然起きない方が悪いし」

呼んでたってお前…、俺ァ寝てたんだから仕方ねえだろうが。
そんなことで一々、腹に乗られてたら身が保たねえよ。

「大輔って意外と昼寝好きだよな」

『いいから…今日はなんだ?』

そう聞けば、俊基はにんまりと笑う。
(というか、お前いつまで乗ってる気だ?)

「今日はなんの日かな大輔くん?」

『今日…?』

俊基越しに壁に掛かったカレンダーを確かめる。
確か今日は二十四日…

『あ―、クリスマスか』

「正解、おめでとう大輔くん」

正確にはイブだが。

「おチビたちがねー、クリスマスパーティーに招待してくれるらしいよ?」

『元就達が?』

「どこで知ったんだかな」

本当にな。テレビか?

「それで、下にもう準備ができてる」『お前は?』

「オレはその手伝い。兼、案内役」

にっこりと俊基は言う。
やっと俺の上から退くと、右手を引いて起こされる。

『なら、行くか。もう結構待たせてるんだろ?』

「え―、まだかまわねーだろ。今日はオレたちが客人だからな!」

…お前は俺を呼びにきたんだろうが。





* * * * *






「だいすけ!!」

「だいすけどの!おまちしておりましたぞ!!」

俊基に連れられて来たいつものリビングだが、今朝とは全く一変していた。
たった数時間でどうやったのかと思うほど部屋中が飾り立てられているのだ。

迎えてくれた元親と幸村も頭に三角帽(?)をかぶっているし、どうやらしっかり現代風のクリスマスパーティーをするらしい。

「どうよ?オレの助言っぷり」

「かざりつけはふうまのダンナがやったんだよ」

得意げな俊基にすかさずセリフをかぶせる佐助。
手には料理を抱えていた。

「りょうりはおれさまと、みぎめのダンナと、りゅうのダンナがつくったんだよ!」

『政宗も?』

「いがいでしょ?でもこれが、なかなかうまいんだわ」

確かに意外だ。
今までしたこともなかったしな。

「と―ぜんだぜ!オレのうではspecialだからな。やすうりはしてねえんだ」

こちらも料理を運んできたらしい政宗。
やはり皿の方が大きくて随分大変そうだ。

そう思い、運ぶだけでも手伝おうかと歩きかければ

「おっと。大輔は大人しく座ってろ」

動き出す前に小十郎に止められてしまう。

「今日の準備は俺らに任せてもらうぜ?」

『そう言われてもな…』

なんとなく落ち着かないのは仕方がない。

「ま―、いいから座ろうぜ?たまにはちびっこに全部任せてみりゃいいじゃん」

「アンタは別に手伝ってくれてかまわねえんだがな」

「やだね。オレはもうかなり手伝ってやったろうが」

肩をすくめる小十郎をよそに、半強制的に座らせられてしまった。

まわりでは小太郎や半兵衛がテーブルのセッティングをし、元就の指導の下幸村と元親がクリスマスツリーの完成を急いでいる。

微笑ましいのはいいんだが、俺はなんのプレゼントも用意していないのだが。

『そういえば、俊基が買い物に連れてったのか?』

「そ―だよ!突然電話されてさあ…」

みんな電話の使い方覚えたのか…。
もう携帯持たせれば一人で出掛けさせても平気かもな。

「大輔に内緒で準備したいんだ―、なんて、愛されてるね―お前!」

「きさまはだいすけにさわるでない」

「だいすけにしょうわるがうつるぜ!」

「だいすけどのをそんけいするのはとうぜんのことでござる!」

抱きつく俊基を引き剥がし、その間に入り込んできたのは元就、元親、幸村の三人。
クリスマスツリーは完成したいらしい。

「だいすけはそこじゃなくて、いちばんかみざだよ」

半兵衛が言うと、すぐに小太郎が腕を引く。案内されて言われるままに座り直した。

「そこだと、となりにもすわれないからね」

「きょうはみな、びょうどうにすることにしたのだ」

「だいすけのとなりはみんなねらってっからな!ケンカぼ―しだぜ!」

「(コクコク)」

しがみついて口々にしゃべる子供らに相槌をうっている間に、料理も完成し終わったらしい。

「ほら席につけ、始めるぞ!」

「せっかくのりょうりがさめちまうじゃねーか!」

小十郎と政宗にせき立てられて、皆バラバラと座る。

「はいはい、みんなこれ持ってね〜」

佐助が手際よくクラッカーを配り、行き渡ったところで振り向いた。


「いっつもいろいろありがとう!だいすけちゃん!」

「きょうは、ささやかだけど、ぼくたちからのおれいだよ」

「こんなんじゃぜんぜんたりねぇけどな!だがとりあえず…」



「「「「メリークリスマス!!」」」」



一斉にクラッカーが鳴り響く。
佐助と小十郎によって料理が取り分けられ、賑やかにパーティーが始まった。

間には幸村と元親の演武が入り、元就と半兵衛にはカードをもらった。慣れないクレヨンと現代の文字がやけに微笑ましい。

本当に、嬉しいなんて言う言葉じゃ言い表しきれないが、他に当てはめられる言葉がない。

感無量とはこういう時に言うのだろうよ。



『皆、ありがとうな』



これしか言える言葉はないが、皆が笑ってくれたから、伝わったと信じよう。

なんと言っても今日は、神の御加護が期待できそうだからな。





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