冬至
「だいすけどの、ずいぶんかぼちゃをかうんでござるな?」
幸村と買い物に来たスーパーマーケット。
確かにカートにはカボチャが丸ごと二つ入っている。
『今日は冬至だからな』
この後、勿論小豆や柚子も買う予定だ。
「おぉ!きょうはとうじでござったか!!すっかりわすれておりました!」
『そりゃそうだ。幸村たちの世界とは暦の数え方もズレてるしな』
世間では別に取り立てて特別な行事でもないし。
とはいえ歪みを正し、禍を払うという仕事柄、一族ではわりと気にしている日では、ある。
まあ…カボチャや柚子はあくまで、ついでではあるのだが。
『幸村』
「なんでござるか?」
『ちょっとこっち向きな』
車に戻り、幸村を座席に乗せる前に向き直る。
正中線から経絡にそって手を動かす。
「???」
幸村は、触れないところで動く手を見ながら不思議そうに首を傾げる。
『厄除け。これがうちでは本命の慣わしなんだ』
「そうなんでござるか!」
『幸村は特に、小さい怪我が多いしな』
皆より少しだけ先に。
そう言えば、やけに嬉しそうな顔をする。
「では、それがしがいちばんでござるな!」
『?そうだな』
「ならば、それがしがいちばんにおぼえ、だいすけどのにやくよけをしまする!!」
…………。
……………。
………………。
つまり…?
一番にまじないを受けたから、一番に覚えて、俺にまじないをしてくれるって…?
俺は自分では出来ないだろうから?
『…じゃあ、後で頼むな』
「おまかせくだされ!!」
頼むだけで、キラキラした顔でにっこりと笑顔を向けられた。
……なんだか、育児の喜びを感じるな。
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