ハロウィン





「Trick or treat!」



〜ハロウィン特別編〜



そう言って俺の部屋に乱入して来たのは俊基。

『…I'm scared.』

突然何を言い出すんだこいつは。
だがこんな笑顔の時の俊基にいたずらされてはたまらない。
とりあえず机の上にあったガムのケースを放り投げた。

「しけてんなー」

『ほっとけ。それより何しに来たんだ?』

ハロウィンって年でもないだろうに。

「暇つぶし?チビ共で遊びに」

で、っておい…

『せめて一緒に遊べよ…』

「智彰が居るだけでストレスが溜まるんだっつの」

話がつながってねえ。子供らで発散するなよ。

「つかチビっこ達にもこんなしょぼい菓子やる気?なんか他にないのかよーぅ」

『買ってきてもすぐ消費されんだから仕方ねぇだろ』

幸村を筆頭に元就やら政宗やら元親が。
量の大半は幸村だがな。

だから家に菓子類はあまりない。

「んじゃ買って来いよ。オレが留守番してやるから」

『………』

嫌な想像しか出てこないんだが。

「オレがハロウィン教えたら絶対大輔んとこ来るぜ?あげないわけ?」

こいつの行動を止めるってのは難しいから、まあ確かにその通りなんだが…。

いかんせん心配だ。

考えている俺を期待したように俊基が見てくることもそれに拍車をかける。

『…怪我させたり、泣かせたりするんじゃねえぞ』

「わーかってるって!オレだって大輔を怒らせる気はないっつの」

立たされるは押されるはでせき立てられるように家を出た。

…後は何事もないことを祈るのみだ。





* * * * *






はい、難関の大輔を追い出すことに成功しました。
ここからはこのオレ、俊基目線でお送りします!

なんつって。

チビ共には初日に散々悪態をつかれたわけだし、大輔を怒らせない程度にからかうくらい良いに決まってる。
智彰にあたるだけじゃ足りません。


“大輔を怒らせない程度に”

これが結構面倒くさいか?
術の練習に縛呪でもかけるかな。

そんな感じで廊下を歩きながらぼんやりと考えている途中、キッチンでパックジュースをくわえた幸村を発見。

見ている前でなにやら戸棚を漁りだした。お?チョコを発見。顔輝いてるなー。幻覚のしっぽが見えるぜ。

あ、何も幻覚で終わらせなくてもいいよな?(大輔いないし)つけてみよ。

『幸村〜』

「!?…っひのどの!!なぜここに!?」

『遊びに来たんだよ〜』

ってことで、そりゃ。

「!!?」

幸村を犬に大変身〜。本物さながら。
我ながら呪術は上手いと思うね。

なかなかのリアクションだな幸村。
いい慌てっぷりだ。

『………』

と思っていたら。
大輔から着信が。

『はい?』

「今術の反応があったが、何をした」

この千里眼野郎…!
過保護すぎんだろ!

『たいしたことしてねーよ』

この様子じゃ絶対術の種類もばれてるな。
あー…

『ハロウィンだから仮装させてやったんだよ』

ナイス言い訳。

「…わかった。帰ったらお前の腕を見るからな」

『そいつは気合い入っちゃうねー…』

ビバハロウィン。
でも見逃されたっぽいけどなにげに釘刺されたよなぁ…大輔が見るなら流石に犬はまずいか。

『…』

面倒くさいが直してやるか(オレのために)。

「…いきなりなんてことをするでござるかっ!!?」

『だから仮装だっつってんじゃん。今日はハロウィンっつー南蛮の祭りでー、子供はお化けの格好してお菓子もらったりする日なの』

言ってる自分でも超アバウトな説明だと思うがここで詳しさはいらねーはずだし。

「なっ!?かんみをもらえるといわれたか!??」

『言った言った。でも仮装してないとダメだから手伝ってやったわけ』

「なんと!!さすればいまひとたびおねがいいたしまする!!」

鼻息荒いなー。そんなに食い意地はってんのかこいつ。
ま、幸村が単純でよかった。

『んじゃいくぜ〜動くなよ』

えー、犬犬犬犬犬犬犬……あっ狼男なんかいいんじゃね?

「おおっ!きものがかわったでござる!」

『南蛮の妖怪よ?あっちの祭りだからさー。さっきのはちょっとした手違いってヤツ?』

「なるほど!ならばぜひさすけにもおねがいしたい!」

返事の前に走り去る幸村。雄叫びをあげて元気いっぱいだね、こりゃ。
まあ全員をやっとかないと大輔に叱られそうだからいいんだけど。
次なるターゲット探しにリビングにむかえばのんきに将棋なんかさしている半兵衛と元就、その隣りのソファで昼寝をする元親を発見。

『はろーおチビちゃん達』

「「………」」

え、無視?
何事もなかったようにスルーすんのやめなさいよ。
ったくこれだから智将は可愛げがないっつか性格悪いっつうか。

まぁいいケド!オレは勝手に術かけるし?

『Trick or treat〜強制的にいたずらだけどねー』

「なっ…!」

「なにをした!?」

半兵衛はドラキュラ、元就は三角帽子の小人風。小人はお化けじゃないけど。ノームとか妖精と思えば仮装には有りってことで。
だって初日のオクラ帽の印象が強すぎんだよ。

『今日は仮装をする日なの。“大輔”(強調)も準備しに行ってるし』

「だいすけが?」

『そー』

また適当なハロウィンの説明を聞かせる。

「…たかむこが言ったならばしかたあるまい。つきあってやろうぞ」

「おおかた君がけしかけたんだろうけど。それにしてもきみょうな格好だね」

かわいくないガキんちょめ。
それにしても大輔の名前は効果絶大だな。この2人から文句一つ出させないとは。
つくづく大輔は好かれやすいぜ。

『仮装なんだから当たり前。ところで元親って海賊なんだっけ?』

「いちおうそうだよ。からくりへいきが主力だけど」

「あらすばかりでめいわくな男よ」

なら海賊の服でいいか。どうせならオレ好みのバイキング風にしよう(無駄なこだわり=男の性だ)。

寝たままの元親も勝手に仮装させてこれで4人目。
なんかもう飽きてきたわ…
面倒くせえこと言っちまったなこりゃ。


そのまま庭に移動して、土いじりしてる小十郎とそれを見ている政宗に近づく。

『また、似合わねーことしてんなあ』

「チッ、てめぇか…何しに来やがった」

『おーい部下のガラ悪すぎんぜ、伊達さんよー?』

「おまえにはこれでもていねいすぎるくらいだぜ」

やれやれだな、まったくよ。
主従揃って目つきの悪いこと。

『大輔がお前らの仮装をみたいっつーから、こうしてオレが手伝ってやってんのに…』

白々しくため息なんかついたりして。

「…なんだと?」

『まぁお前らが非協力的なら仕方ねえ。大輔には諦めてもらうしかないな』

ピクリと反応する。
2人同時ってのがまたおかしいぜ。

「…ききずてならねぇなあ。だいすけがなんだと?」

「その話、詳しく吐いてもらおうか…」

いや流石。伝家の宝刀“大輔”は威力が違うね。
さっきまで視線だけで二、三人殺せそうだったこの2人がうっすら焦ってるじゃありませんか。

『別にぃ?なんでもないって』

「てめぇいまだいすけがどうとかいってたじゃねえか」

『オレそんなこと言ったっけ?』

「…この野郎、ナメた口ききやがって…」

おおっ、小十郎の奴リアルに血管浮いてるよ。すげーな。

「はいはーい、そこまでねー?おふたりさん。ケンカはしないきまりでしょ?」

「そうでござる!だいすけどのにおこられてしまいまする!」

どこからか現れた佐助とドアを壊しかけるわんこ幸村。

その声に舌打ちで答える主従。
本当にガラ悪いね君ら。

「アンタもあそんでないでさっさとやっちゃってよ。だいすけちゃんにいわれたんでしょ?」

「全くだ。主の命令くらい素直にやれや」

「なんだってだいすけはおまえなんかちょうようしてんだ?りかいできねーな」

『…かっわいくねー!幸村はこんなにかわいいのに!』

てかなんて口の減らないガキ共だ!
幸村を小脇に抱えて比較しても鼻で笑うだけってどういうこと。
どんだけ性格悪いのよ。

『お前らなんかこれで十分だっつの!』

「「「!!?」」」

「さすけ!」

一言多い小十郎と佐助はフランケンシュタインとミイラ、最高にムカつく政宗は魔女にしてやった。

『かわいーぜぇ?政宗ちゃん。お前なんか女装でもして愛嬌を学べや』

「てめぇ…!!」

「…!…!?」

「さすけっ!?どうしたのだ!」

一言多い組はついでに口も開かなくしてやったさ。

「こじゅーろ!はなせないのか!?」

『ケッ!バーカ。オレを甘く見るからだぜ』

「ほんとさいあくだな、てめぇは!」

「さすけのじゅつをといてくだされ!」

『嫌だね』

ぎゃんぎゃんうるせーな。
こいつらの口も塞いじまおうかな。


なーんて考えていたら


「…俊基」

『あらら〜?おかえり大輔。早かったのな』

「「だいすけ!!」どの!!」

「「!!」」

途端に目が輝きだす4人。
ついでに大輔の後ろには警戒態勢バリバリの小太郎。最後まで見つからなかったよこの子は。
走り寄る幸村・政宗コンビを足にくっつけたまま大輔は呆れたような顔をした。

「あのな…」

『おーっと、待ったぁ!!フランケンもミイラもしゃべらねーじゃん!オレはそれを忠実に再現したまでだぜ!』

「……」

「べつにそのふらんけんとかみいらじゃなくたってよかったじゃねえか!!」

「そうでござる!ほかのものにすればよかったのだ!」

『うっさい!お前らは話せんだからいいだろが!』

「…解くぞ」

『あぁ!ひどい大輔!!』

「ざまーみろ、ばーか!!」

さっさと2人の術を解いてしまう。
またうるさくなっちまうじゃん!
大輔は良いだろけどオレは集中攻撃なんです!!




ま、いい暇つぶしになったけどさ!!





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