訪問四ヶ月後2
政宗を元の年齢に戻した夜。
目の前には小太郎、
と政宗。
「説明してもらおうか、大輔?」
「………」
それでどうして俺が責められているんだ?
『……何を?』
どっちが点けたのかは知らないが、煌々と明るい電気が目に痛い。寝起きの鈍い頭でゆるゆると事の起こりから考え直す。
「なんでここに風魔がいるんだ?」
やけに睨まれている気がするが、俺からすればむしろ、どうして政宗が俺の部屋に居るのか解らない。
ちなみに今は午前二時。早寝早起きが基本の我が家では皆、寝静まっている時刻である。
『……習慣、だから…?』
しばらく前に俺から誘って、それからなんだか一緒に寝るのが当たり前になってしまった。
だからどうしてと言われても理由らしい理由はない。
『なあ?』
「……(コクン)」
隣の(政宗の位置からすれば俺の前にいる事になる)小太郎に振れば、同意するように頷いた。
「…〜っ!!coupleみたいな反応はやめろ!」
別にそんなつもりはない。
…と思ったが、やっとまともに稼働しはじめた思考で見れば、確かに政宗の台詞を否定しきれないかも知れないと考え直す。
なにしろ今の俺たちの体勢は、俺が小太郎の腰を抱き、小太郎は俺の胸に両手でしがみついている。それも、今まで寝ていたんだから当然、ベッドの上でだ。
「オレに無断でいつからこんな事してやがったんだ?」
不機嫌なあまり政宗のガラがどんどん悪くなっていく。
別に政宗の許可は必要ないと思うのだが、今それを言うと火に油を注ぐような予感がするため黙っておこう。
『いつ…だったかな…小太郎たちが家に来て…』
「…!(サッ)」
思い出そうと記憶を辿りはじめると、すかさず小太郎が両手を出した。
立っている指は六本。
『…六日目だったのか?』
「…!(コクコク)」
「Shit!!そりゃずっとじゃねーかよ!!」
よく覚えていると感心した矢先、政宗が叫んだ。
確かにまあ、ずっとと言えばずっとだが。
『ところで、政宗はこんな夜中にどうしたんだ?』
「おいおい…そりゃねえだろ大輔?」
寝間着姿で口を尖らせるのは可愛いが、俺としてはそろそろ騒動の根本を知りたい方が強い。
「夜中Bedに忍んで来るんだぜ?一つしかねえだろ?」
先程までの不機嫌さから一転、政宗は不敵な笑顔でベッドに近づいて来る。
「よば…」
言葉を更に続けようとした政宗を止めたのは、目では追いきれない速さの手裏剣だ。
政宗の頬を掠めたそれは、遠くの壁で突き刺さったような音がする。
「風魔…テメェ、やってくれるじゃねえか」
「…………」
再び睨み合う二人。嫌な感じに空気がひりつく。
「そこをどきな。今日から大輔の隣で寝るのはオレだ」
「…………」
不遜に言う政宗と無言で武器を構える小太郎。どちらも譲る気はないようだ。
全く、夜中に面倒な事をしでかすものだ。
『…ここで争うんじゃねえよ』
小太郎はまだ子供姿だとは言え、それでも中学生くらいはある。政宗と二人で暴れられたら流石に家の方が保たないだろう。
誰が俺の部屋で寝るかなんて下らない事で壊されたら、いくら俺だって落ち込むぞ。
『今日は二人ともここで寝な。明日からは一日交代だ』
「!!」
「Yeah!!」
勢いよく振り向く小太郎。
ガッツポーズを決める政宗。
正反対の反応をする二人にこっそりと息を吐く。小太郎には悪いが、他に政宗を納得させる方法が思いつかなかった。
『どっちとも寝ない方が良かったか?』
「…!……」
聞けば、小さく、だがしっかりと首を振る。俺としても小太郎が相手なら安眠が約束されて良いのだが…。
『ごめんな』
癒やされたくてつい細い肩を抱き寄せる。ふわふわした赤毛を撫でていると
「Hey!大輔!贔屓はナシだぜ!!」
自分も撫でろと言わんばかりに政宗が飛びついてきた。上に乗る体を小太郎とは逆の横に下ろし、要求通りに撫でてやる。
満足そうに頭を寄せる仕草に苦く笑う。
『(…まぁ、両手に花なんだがね…)』
今夜は落ち着いたとは言え、明日からが厄介な事になってしまった。
元の姿に戻した初日からこれならば、政宗を戻すのはもう少し先送りにするんだったと、ちらりと思った。
(『政宗が言いかけた内容くらい、俺だって流石に気付いているよ』)
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