いつだったか忘れたが、大分昔に買ったシルバーのネックレス。

くすんだ鈍い色と、プレートの不釣り合いに幼い四つ葉の意匠が妙に気に入って今もまだ手元にある。


しかし買ったはいいが少し細くて華奢な作りが裏目に出て、どうも俺には似合わないからほとんど着けることもなかったのだが。



それが今、政宗の手に握られているのは何故だ?


『…珍しいもんを引っ張り出してきたな』


「だいすけのつくえにあったぜ」


当たり前に言うね、お前。

てことは俺の机は漁られてるのか?


『気に入ったのか』


それ、と指せば


「ああ。いいdesignじゃねえか」


と。

政宗に手渡されたものを懐かしがってながめながら、しゃらりと絡む鎖を指にかける。

良くも悪くも、伊達男はなかなかに目敏いようだ。


『こっちこい』


呼んでその首に着けてやる。

持ってきたということは、‘これをくれ’という解釈で大体あっているだろう。

どうせ着けないんだし構やしない。


『これは首にかけるもんだ』


「なるほど」


俺には合わない細さだが、政宗にはそう悪くない。
子供には少しゴツい気もしたが…まあ、大丈夫だ。


「これはだいすけのかもんか?」


『あ?…ああ、違う。ただの模様だ』


黒貫穴の四つ葉は言われてみれば確かに家紋のようにも見える。

が、実際はよくあるクローバーのモチーフというだけで。


「clover?みつばじゃねえのか」


『三つ葉だな。だから四つ葉を見つけると幸運だと言われている』


正確な話は全く覚えていないが。

適当に納得した政宗は、気に入ったのか鏡から目をはなさない。
角度を変えながら確かめたりしている。


『クローバーのスペルは“c・l・o・v・e・r”』


「Ah?それがどうした?」


『“love”が入ってるだろ?葉っぱ一枚分愛を多く受けられるから四つ葉は幸運のしるしなんだ、って説が俺は気に入ってる』


いくつか聞いた気のする話の中では、正否はともかく好きなのだ。

だってそれだけ愛を求めるなんていじらしい花だと思わないか?


「…だいすけがそんなromanticistだとはおもわなかったぜ」


『そうか?』


「おまけにキザすぎるな」


肩をすくめて言う。そう立て続けに言われてしまえばまいってしまう。

ま、確かに自分でも思わないではないが。


「だが、わるくねえ」


にやりと笑う政宗。

その次の台詞には驚かされた。


「このかざりごと、それをだいすけがオレにくれるんだろ?」


葉っぱ一枚分多くと。

にっこりと嬉しそうな子供を前に、もはや笑うしかない。


『今は足りてないのか?』


「まだまだ、ぜんぜんだな!」


手始めにと両手を伸ばして抱っこをせがんでくる。

最初は抱えられるのを嫌がっていたくせにな。



…まったく墓穴を掘ったものだ。





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