中学生たちが増えました3





「…意外だ」

夕飯を作ろうと台所に立てば、後ろからついて来ていた片倉に呟かれる。

料理などしそうには見えないのだろう。
だがその顔で野菜に並々ならぬこだわりを持っている片倉には言われたくない。

『他に誰が作るんだ』

「まぁ、そうなんだが…」

「だいすけちゃんだってダンナにだけはいわれたくないとおもうよ〜?」

「たしかに。きみもかなり台所とはあわないひとだよね」

さらに後ろから入って来たのは佐助と半兵衛、風魔。なんだか家臣達は率先して手伝いを申し出てくれる。
…幸村は何かしら壊すので佐助に閉め出されたのだが。

『とりあえず、早くしねえと日が暮れちまうぞ』

皆料理の手際自体は悪くないが、何しろ量も品数も多いからどうしたって時間は掛かる。
冗談ではなく日が落ちてしまうだろう。

ちなみに夕飯の支度に掛かるこの時間帯、君主組と幸村は大抵稽古をしているかテレビを見ているかのどちらかなので大人しい事が多い。

「そうするか」

「りょーかい」

「………」

『風魔はこれの皮剥いてくれ』

寄って来た風魔に指示を出しつつ片倉にも魚の下拵えを頼んだ。

半兵衛と佐助はもう勝手に作り始めている。専ら下準備までだがこの二人はなかなか連携がとれているらしく、半兵衛が料理本を見ながら指示を出せば、佐助が器用にそれをこなすのだ。(実はメニューを決めているのも半兵衛と佐助。二人が本から選ぶ一品を基準に他のおかずを考えているからだ。)


子供ばかりとはいえ俺を含めて五人。
自分の家だがよくこの人数で動けるものだ。こういう時はつくづく広い家で良かったと思う。

「高向」

呼ばれて振り向けば、片倉が魚の皿を持って来た。

『出来たか』

「おう」

やっていた作業を一度中断し、仕上がりを確認する。

…かなり正確で丁寧だ。

料理は本当に性格が出るよな。


『…片倉には、火の使い方も教えとくか』

「いいのか?」

今は俺しか使っていないが、一人くらい覚えてもらった方がいいだろう。
現代の仕組みと火力は危険だが、片倉なら心配いらなそうだ。

『ああ』

「え〜!?おれさまにはだめだっていったのに!」

後ろで会話を聞いていた佐助がすかさず口を出してきたが、残念ながらそれは諦めて貰うしかない。


『イスの上で調理する気かよ』


どうしたって背が足りない訳だからな。
しかし火元に余分な物を置く気はない。

それになんだか微笑ましすぎやしないか。

「子ざるみたいだね」

「そうだな」

「……(コクリ)」

「ひどっ!!ふうまのダンナまでかよ!?」

みんなに言われて不貞腐れた佐助はそのままに、さっさと俺は片倉にコンロの説明をした。





説明をしながら、幼児サイズの片倉がイスに立つ姿を想像してしまったのはここだけの話だ。





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