中学生たちが増えました1





「オレもいく」


先程からそう言って聞かないのは政宗。


「それがしもつれていってほしいでござる!」


それに対抗している幸村。


「おいこら!きょうはおれのばんだったろーが!」


そして元親。


新しく増えた二人の物を買い足しに出ようとした矢先、こんな言い争いが始まったのだ。
俺が財布やら鍵なんかを取りに行っていたほんの短い間に。

「ダンナはおとといいったでしょ。だいすけちゃんこまってるじゃないの」

車の座席は三つ、乗りたいのは五人。
確かに子供だし無理すれば座れないこともないが、安全性を考えるとそこはあまり無理をしたい所ではないのだ。

「まさむねどのだってにどめではないか!」

「こじゅーろはオレのだいじなみぎめだぜぇ?オレがあんないしてやるのがすじってもんだろ?」

「政宗様、俺をそんなダシに使わんでください…」

「Ah〜n?オレがいっしょじゃふまんなのかよ?」

「そういう事ではありません」

「ならもんくねーだろうが」

「あるにきまってるでしょ。りゅうのダンナがいったらうちのダンナまでいきたがるんだからさあ」

「しるか。かいぬしのせわはちゃんとしとけよ」

「ひど!てかそのことば、まるっきりみぎめのダンナにもあてはまるから!」

「だから、おれをむしすんじゃねえって!!」

「それがしもいきたいでござるぅああ!!!」

…静かなのは無言で困っている(らしい)風魔と傍観している智将二人だけだ。
三人はひたすら喚くし、なだめる二人はいい加減にイラつきはじめている。
そろそろ何とかしないと不味い気がしてきた。

「なぁいいだろ?つれてけよだいすけ!」

「それがしもつれていってくだされ!!」

急に二人が振り向いて俺を見上げる。政宗にいたっては足にしがみついてくる始末だ。

…絶対にわざとやっているんだろう。
俺がそういった態度に弱い事をこの子供は知っている気がする。

「きかなくていいからねだいすけちゃん。すぐちょーしにのるんだから!」

「その通りだ高向。変な遠慮はするんじゃねえぞ」

訴えかけるような二人の後ろから、少々威嚇混じりの保護者が二人。
更にそのもう少し後ろに、すっかりその輪から弾き出された元親がぽつんとしている(少しだけそれが哀れに見えた)。


『…今日は駄目だ』

「なんでだよ!?」

はっきり言えば、しがみつく政宗が力を強めて聞いてくる。幸村の方はあからさまにがっかりしたような表情だから、もう諦めてくれたのかもしれない。

『明日から二巡目だろ?なんでそんなに行きたがるんだ』

今日元親と片倉と風魔を連れて行って、丁度全員が一度は外出した事になる。明日からもまた連れて行くし、寧ろどうしてそこまで行きたがるのか。

一日くらい大した問題ではないだろうに。

「だってよぉ…」

政宗はちらりと後ろの片倉を見て、再度視線を俺に戻す。そして、顔を貸せというように手招きをした。

『?』

「こじゅーろはぜったいニンジンくわせようとしてくんだよ!」

大人しくしゃがんで耳を貸せば、ぼそぼそとそんなことを言ってくる。

「だから、はなからかわないようにみはりてぇんだ…!」

カートに入れたら戻したりしてか?
バレないようにするのは結構難しいと思うがな。

…そういえば、誰かが料理のニンジンを毎回残していたかもしれない。それでそんなに付いて来たがったのか。

『……なら、買わねえから』

途端に政宗の顔が輝く。

『留守番してくれるな?』

「OK!だいすけははなしがはやくていいぜ!」

上機嫌にタックルしてくるのはそのままに、今度は幸村に向いて念を押しておく。

『幸村も、また今度連れて行くから』

「…しょうちしたでござる」

政宗とは反対にこっちはやけに暗い。
幸村には甘い物でも買ってきてやろうと思いながら、ちび二人の頭を撫でた。


『待たせたな…』

改めて立ち上がりながら、他よりは背の高い片倉に視線を向ける。

「いや、こっちこそ手間かけさせて悪かった」

この後も、と続いた言葉に苦笑が混じっている。政宗の事も買い物の事も、片倉が謝る必要は無いはずなのだが、それに違和感がないところに保護者らしさを感じるな。

少し遠くにいた風魔も、気にしていないのか首を振ってくれる。

『行くか』


離れていた元親と風魔を呼び寄せ、他の子らをその場に残す。

そうしてやっと出発することが出来た。





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