訪問一週間以内4
『ただいま』
扉を開けて、声をかける。隣の政宗が不思議そうに見てくるから、挨拶だとただ流した。
買い込んだ荷物を両手に抱えて廊下を進むが、今のところ一人の子供も見ていない。家は広いが、皆部屋にこもっているのだろうか。
『真田?猿飛、いるか?』
とりあえず生鮮食品だけは冷蔵庫にしまってから、改めて探しだす。手に買ってきた服をあらかた抱えて歩きまわっているせいで、自分でもガサガサとうるさくて仕方がない。
「あ!だいすけちゃん、こっちこっち〜」
階段の上から声がした。二人とも二階にいるのだろうか。
政宗を伴って階段を上がれば、向かっているのは自分の部屋だという事に気付く。
…一瞬、部屋の物が心配になってしまった。
『猿飛?』
「なんかみんなこのへやでおちついちゃってさー。ダンナなんてひるねしはじめちゃったのよ」
ドアの前で待っている猿飛は、笑ったまま大げさに肩をすくめてみせる。その拍子に、でかすぎるTシャツがずり落ちたのはご愛嬌だ。
「っていうかりゅうのダンナ!ひとりだけずるいんじゃないの?」
出掛けた事を言っているのだろう。笑顔から一変、非難するような顔に変わる。
「ふくまできせてもらっちゃってさぁ」
「Ha!さるにひとのふくはもったいねぇだろ?」
「なっ!ちょっと…」
『喧嘩すんなよ』
言い合いが始まる前に強制的に終了させた。とにかく部屋の中に戻ってしまおう。
無駄に争われてはたまらない。
中では大人しく本を読む竹中と毛利、俺のベッドで寝ている真田と長宗我部。多少荒れてはいるが、幸い目につくような物的被害はないようだった。
『先に猿飛だけ着替えるだろ?』
頷くのを確認しながら服を取り出し始める。ついでに起きている二人にも選んでおいてもらおう。
「あ、これいいね〜」
「われはこれにする」
「じゃあぼくはこれにしようかな」
とりあえず二、三日分くらいの衣類を広げると、小さな手がちょこちょこと布を引いていく。
わりと普通の服だけを選んだつもりだったが、それでも個性は出るもんだな…。
『二人も着替えておくか?』
着物だし汚したら面倒だと、猿飛に服を着せつつ聞いてみる。
「べつにこのままでかまわん」
「ぼくはきてみるよ。らくそうだ」
着方を聞いて部屋を出て行く竹中。それぞれが選んだ服を分けて脇によせる。
『二人が起きたら適当に選ばせて、着せてやってくれるか』
「だいすけちゃんは?」
『そろそろ夕飯作らねえとな』
「え、じゃあおれさまも手伝う!」
ありがたいが、なら…
『政宗、毛利、頼んだぞ』
座っている二人に顔を向ける政宗なら着方もわかるだろう。
「Okay.だいすけ」
返事のいい政宗と違い眉をしかめる毛利。見た目の通り気難しいのか?
『駄目か?』
「それはかまわんが…われも名前でよべ」
は?
「だよね。りゅうのダンナだけずるいんじゃない?」
再び睨み合う政宗と猿飛、ではなくてあー…佐助?
「しのびふぜいがよくゆーぜ」
得意そうに笑う政宗の方が優勢か…なんて言ってる場合じゃないな。
希望をきいた方が早そうだ。
『…元就、頼めるな?』
「まかされてやろう」
満足そうに頷く。この君主も意外と気安いのか?
「佐助も。下行くぞ」
「! りょーかいだいすけちゃん!!」
にっこり笑って後ろをついてくる。
……本当に子供ほしくなってきたな。
(この後、気付けば着方をチェックしただけの竹中も名前で呼ぶことになる)
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