訪問一週間以内2
「ah?なにしてんだ?」
二階から降りてきたのは伊達。靴を履く俺を目敏く見つけたらしい。
『出掛ける』
「つれてけ」
あまりの即答ぶりに留守番を頼む暇もない。
『…その格好でか?』
まずいかと両手を広げている相手は、未だに青い鎧姿だ。さすがに履き物の類は脱がせているが。
『よくはねぇな』
「はずしてもダメか?」
口を曲げて食い下がるのが何というか…微笑ましいような子どもっぽいような。
というか可愛い。
ちょっとした無理なら聞いてやりたくなるから不思議なもんだ。
『なら、身軽にしてこい』
「OK!まってな!!」
手近な部屋に駆け込んで行く。俺があのくらいの年だった頃だって、あんな反則まがいの特権持ってなかったと思う。
「どうだ!?」
当然だが着物だ。しかも少し妙というか、な…。
どうするか一瞬決めかねる。
その時、迷っていた俺を伊達がみあげた。
「だめか?」
…子どもだ。多少のおかしさは許される範囲だろう。そもそも外せない眼帯は刀の鍔だしな。服なんて些細な事だ。
なんて、そんな甘い見方をしている自分に驚いた。本家の連中が知ったら怒りそうだな。
『まあ…いいか。行くぞ』
「あ、はきもん」
『いらねえよ』
どうせ全て買い揃えるのだ。靴も向こうで履けばいい。
取りに戻ろうとする伊達を制して、反対に呼び寄せる。不思議そうな子どもに手を添えると、そのままひょいと抱き上げた。
「なっ!?」
『暴れるなよ』
意外にもしっかり捕まってきた伊達を抱えたまま車庫に向かう。
「だいすけ?!」
助手席に座らせて勝手にシートベルトも装着した。
『外すなよ?危ないからな?』
「なんなんだよこれ?」
自分も運転席に乗り込むと、キョロキョロと目を動かしている伊達が聞いてくる。それがシートベルトのことなのか車のことなのかはわからなかったので、一応両方の説明をしておいた。
走り出してからは更に質問攻めにされて、自分でもよく答えきったと思う。目的地に着いた時は、正直に言って既にちょっとした疲れを感じていたくらいだ。
車を停めると助手席に回り、再び伊達を抱え上げる。
「…このたいせいはなんとかならねーのか?」
確かに(中身は)子どもではない訳だから恥ずかしいだろう。
しかし裸足で歩かせるつもりはさらさらない。そうなれば選択肢は自然と狭まるわけで。
『車で待つか?』
先に俺がフリーサイズの何かを買って来てもいい。
「‥No thank you.このままでいい」
それともおんぶの方がいいかと言おうかと思ったが、胸の辺りを掴む手が可愛いかったからやめた。
…これが父性というものなのか?
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