訪問一週間以内1
廊下から呼ばれたような気がして立ち上がる。ドアを開け、聞こえた方に向かうと
「もうしわけないでござる…」
「ほんと、ごめんね?」
髪から水が垂れている真田。
自分がいながらと謝る猿飛も、隣りの真田同様頭からびしょびしょだった。
ついでに言えば、二人の歩いてきたらしい床も。
『とりあえず、拭きな』
驚いたものの、手はどうにかタオルを差し出すことに成功した。目の前の二人は服もかなり濡れてしまっているから、そのままでは部屋に戻れもしない。
その場で濡れた服を回収し、洗濯機の所へ向かう途中。
…なんとなく原因がわかった。
開けっ放しのドアの先は洗濯機も置いてある風呂場。浴室からはしっかり水の跡が延びている。
まだ昼間だし、風呂の説明は夜でいいかと思っていたのだが、既に自発的に探検してくれたようだ。
抱えている服は、洗濯機に放り込むのが躊躇われるものなので後で手洗いにするとして、今は濡れた床だけざっと拭いておく。
そのまま自分の部屋に戻ってはみたが。
「…ねぇよな」
着替えが。
服を回収したのはいいが、その後二人に着せるものがない。この家にあるのは自分の服だけだし、当然それは半分程度しか背丈のない子どもに合うわけもない。
確かにすぐに突き当たる問題だったのかも知れないが。仕方ない。
「早めに買いに行くか…」
とりあえず今日のところはでかすぎるTシャツで我慢してもらうことにして。
と、思ったのだが。
そんな猶予はなさそうだ。
『……できるだけ急ぐから』
持ってきたTシャツを着せてはみたが、予想以上に大きい。裾がひざの下まであるのはいいとして(下に穿かせるものもないから)、首もとが開きすぎている。うっかり肩が出てしまいそうなくらいだ。
「なんだかこころもとないでござる…」
「悪いな、俺のしかねぇんだよ」
全く悪くはないはずだが、無性に謝りたくなるのは何故だ。
「だいすけちゃんがあやまらないでよ。でもたしかに、ちょこっとだけいそいでくれるとうれしいかも」
『了解。服と食いもんだけにするから、ちょっと大人しくしててくれな?』
頷く二人を確認する。
台所には近づかないようにもう一度繰り返してから、俺は財布を取りに部屋を後にした。
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