来訪三ヶ月後1.





『少し、余るな』

まあ、見るからに目線は下だから、予想はしてたけどな。
…小十郎だから少しで済むんだろうが。

「丈が足りねえことはあったが、余るなんて何年ぶりだろうな…」

複雑な顔で呟く小十郎は、確かにかなり上背がある。まして戦国時代の日本なら随分と大柄な方なんだろうが…悪いね。俺は現代仕様のアメリカンナイズされた大きさなのさ。
まあ現代でも、でかい方だが。

『買いに行くまでちょっと我慢してくれな。もう店開いてねえから』

「別に大輔がよけりゃ俺はかまわねえよ。貸りてんだからな」

さらっと言ってくれるのがありがたい。
俺ももう少し考えて戻せばよかっんだが…


………


…言い忘れていたが、小十郎が実年齢に戻った。
今日の午後、というかついさっき。

研究の最終確認、あるいは逆に第一回目の挑戦と言ってもいい術の使用だった訳だが、詰まるところそれが成功したのだ。
その成功自体はさして驚くような事でもない。念入りに試してきたおかげで九分九厘術は完成していたし、残りのわずかな部分も理屈では完璧だったからな。

だが不測の事態というやつはどうしたって起こり得る。それが無く、無事に終わった時は流石に俺も気が抜けた。


…そしてまあ、今に至る。子供時代の服が着られるはずもなく、俺の服を着てもらっているのだ。

はじめから戻る予定だったんだから、先に服の用意くらいしておけばよかったな…。

『とりあえず、皆に報告に行くか』

頷く小十郎を伴って階下のリビングに向かう。
いつも通り集まっているだろうとドアに手をかけた、瞬間、

「ギャアアアァァ!!!!!」

左手奥から盛大な悲鳴。
それを聞いて開け損ねたリビングのドアも内側に勢いよく開かれる。とっさに手を離したおかげでなんともなかったが、わりと危ないだろそれは。

「…っ、こじゅーろぉー!!!??」

扉を引いた張本人、政宗が目を丸くして叫んだ。

「なんでもどってんだよっ!??」

「政宗様、それを今説明しようと…」

わめく政宗はとりあえず小十郎に任せ、先ほど悲鳴が聞こえた方に足を向ける。
皆の個室が並ぶ区画だから誰がいても不思議ではないが…

『佐助?』

硬直する姿に首を傾げる。周りにはこれといった異変もないようだが、いったいどうしたっていうんだ。

「……な」

『?』

「なんでみぎめのダンナがだいすけちゃんのふくきてんのっ!!?」

突然目にもとまらないような速さで佐助がすがりついてくる(ほとんどタックルだ)。その顔も必死というかなんというか、ちょっと怖いくらいだ。

『…他にないから、だろ』

「てかなんででかくなっちゃってんのさ!!!」

いや、だから…それを説明しようと降りてきたんだが…


なあ?わかってくれよ。

なんでそんなに半狂乱なんだ?
頼むから涙目はやめてくれ。せっかく完成させたのに、なんだか悪い事をしたみたいな気になるじゃないか。


…うん、まさかこんな展開になるとは思わなかったな。




(予想外、というか…あれ?)





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