来訪一ヶ月後3.





体の芯が温まるような感覚に先導され、ふっと意識が浮き上がるのを頭の奥で感じていた。


そして、目を開けた瞬間。


『…っつ…!』


思いきり頭を殴られた。


「ド阿呆」

反射的に頭を抱えれば、当然だと言う声が降ってくる。
そちらに視線を向ければ、盛大に顔を歪めた俊基の姿が。

徐々に記憶が戻って来て、ようやく大体の展開に考えが至る。俺が倒れたので急遽俊基が呼ばれたのだろう。

『…あー…悪いな…』

「まったくだぜ。だがそいつはオレへは勿論だがチビ共にも言ってやんな」

親指で示された先には、ズラリと遠巻きに俺を囲む幸村たちが並んでいた。
心配だと書いてあるような顔が目について、確かにこれは不味かったらしい。俊基の不機嫌さも頷ける。

「お前が気ぃ失ってこいつら大パニックよ?半狂乱なまんまオレんとこ電話してきてうるせーったら!」

呼び出されて気が立っている俊基に再度謝りながら、寝かされていたソファに座り直す。
改めてよく見てみれば何人かの目元は既に赤い。そんな光景は、単に責められるより厳しいものがあるわけで。

『驚かせて悪かったな』

「…!とつぜんどうしたんだよだいすけ!?」

「なんかあったのかよ?おれたちのせいなのか!?」

『違う。何でもないし、大丈夫だ』

「うそ!ぜんぜんなんでもなくなんかないってば!いまだって…だいすけちゃん、まだかおいろわるいんだよ?」

「そうやってきみは、たおれるまえもだいじょうぶだって言ってたじゃないか…」

飛びついたまましがみついて離れない小太郎と幸村を撫でながら、言われた言葉に苦笑する。

というか、もう笑うしかない。

端から口先で騙せるような相手ではないのだった、この子供らは。
さっきの一件で俺はすっかり信用を失ってしまったらしい。

「こいつに聞いたぜ大輔。お前そんなに早死にしたかったんだな?」

一人だけ少し離れた位置に立っている小十郎を指差しながら俊基が真顔で睨んでくる。

「オレがお前に言うなんて釈迦に説法もいいとこだけどな、いくら能力が高かろうが頭抜けてようがキャパってもんはあるんだよ」

『…わかってる』

「いーやわかってないね!こんな呪の塊と生活してるくせにいつもの調子で力使うくせに!」

…返す言葉がないね、まったく。

大丈夫だと思ったんだよ、一日くらいの消耗量なら。
とは言えないが、まぁバレているんだろう。

「とにかく、今後は実験は三日に一回だからな!お前らもそれ以上は協力するんじゃねぇぞ」

「しょうちしたでござる!!」

特に小十郎と小太郎に念を押すと俊基はさっさと帰って行く。
かなり氣力が戻っているあたり、あいつに大分世話をかけたらしい。去り際にふらついていたこともあるし、結構無理をさせてしまったようだ。

…大概面目ねえ事をしちまったぜ。今度礼をしないとな。


「だいすけ」

本気で反省していたところに元就が寄ってくる。
珍しく眉間にしわができてしまっているのが自分のせいかと思うと心苦しい。


「きさま…もうかくしていることはないであろうな」


『………』


普段の態度と変わらない上からの口調ではあるものの、その元就にまでうっすらと赤い目元で睨み上げられて。

もう無茶はするまいと心底後悔させられてしまった。




(反省します。海よりも深く)





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