来訪一ヶ月後2.





「あれ?」

いつもと変わらないメンバーで、いつもと変わらない家事をこなしている時。

「だいすけちゃん、ちょっとかおいろわるくない?」

唐突に佐助がそう言い出した。

「ほんとだ。どこかぐあいでもわるいのかい?」

『自分では特になんともないんだが…そう見えるか?』

ぴったりと側についた小太郎に聞けばすぐさま頷く。しかも珍しくかなりはっきりとした肯定だった。
小十郎も心配そうに寄ってきては、下から覗き込んでくれる。

「ムリしないでやすんだほうがいいよ?ここはおれさまとみぎめのダンナでやれるし」

「そうだよ。ただでさえだいすけは“だいがく”に行ったりしていそがしいんだからね」

「…(コクコク)」

やけに真剣な顔をして口々に言ってくれる子供らが微笑ましくて、順番に頭を撫でて行く。
これが意外と喜ばれていると知ったのはつい最近のことだ。

『なら、甘えさせてもらうか』

気遣いに礼を言いつつリビングに向かおうと踵を返す。
その俺の袖を小十郎が引いた。

「おい…本当に大丈夫なのか?」

疑いと気遣いが混ざったような渋い顔で小さく告げる。その顔が他の武将達に見えないように背を向けてはいるが、目に浮かぶ心配は他の者よりも一段深い。
恐らく例の実験のことが頭にあるのだろう。

『そんな顔するなよ。ただ…今日は止めておこう。流石に無理そうだ』

「…!」

何か言いたそうにしたと思ったのだが、俺が進みの遅さを謝るとそのまま小十郎は口を閉じてしまう。
結局はそれきり黙ってしまった。

『明日は必ずする』

「……早く行け」

実験のことだろうかとそう言えば、舌打ちと共にじろりと睨まれてしまった。
去り際に腕を叩かれたのがやけに強かった気がしたが、振り向いた時既に小十郎は先程の位置に戻り始めていて。

追いかけてまで聞くようなことでもないかと思い、俺もその場を後にした。



*



リビングのソファに腰掛けると思った以上に体が重い。いくら何でも連日未完成の術の実験を行ったのは失敗だったか。

とりあえず出来る範囲で回復しておこうとするが、個人での術は複数での回復と違い効果の出が遅いところが難点だ。
仕方なくそんな遅い回復を待っていると、その間に任せてしまった家事も済んだらしい。ちらほらとキッチンから戻ってくる子供らが寄ってきては俺の顔を覗き込んでくる。

「だいすけ、ほんとうだいじょうぶなのかい?」

『大丈夫なはずなんだがなあ…』

ぎゅっと小太郎が手を握ってきた時、自分との体温の違いに驚いた。自分の手は随分と冷えていたことに今更ながら気付かされる。

「…!!」

『悪い、冷たかったよな』

更に力を入れてきた小さな手を一度外し、両手を摺り合わせてみるがあまり効果はないな。

そう思っていたら、もう一度小太郎が俺の両手にしがみついてきたから困った。

『小太郎?冷えるからよしな』

「………。」

離れるように言うがただブンブンと首を振るばかり。

『どうしたんだ?』

「ふうまのダンナもしんぱいしてるんだよ」

『佐助』

「みんなほんきでしんぱいしてるんだよだいすけちゃん。おれさまだってさ…」

それくらいの顔色なのだと重ねて言われ、じれたように見つめられる。

「できることくらいさせてくれよ」

少しばかり情けない顔でそう言った。
同じように必死な三人にすがりつかれ、どうしたものかと思ってしまう。

だが、考えながらその三人を順番に視界捉えたのを最後に、俺の意識はぷっつりと途切れたのだ。




(「急がばまわれ」は本当でした)





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