来訪一週間以内2.
威嚇し続ける二人を先の政宗達より更に時間をかけて納得させ、今の時点で判明している全ての情報を開示してみせる。
そして、政宗達と同じ条件と権利、保護と帰還の確約も了承させた。
その結果として、やっと片倉、風魔という二人の名前も聞き出した。
その矢先
「……あの、さ…大輔…?」
これだ。
正しくこれが悪い予感の正体だろう。
というか、これ以上の悪夢は勘弁して欲しい。
それぐらい最悪な話を、智彰は口にしやがった。
こともあろうか、自分が全ての原因だと言い出したのだ。
『ふざけるな!』
「…ひっ!!」
次期当主としての役目柄、幾ら日頃から忍耐を求められているとは言え、流石にこれは据えかねる。ましてや他人を巻き込んだとなれば尚更に。
…話の顛末はこうだ。
まずこの智彰という男は先見や気功系のことはからきしなのだが、こと呪術に関しては一族でも一・二を争う腕前なのだ。また本人の意向もあり、呪術の強化・開発を日課としている。
此処までは別に構わない。
むしろ良い。
問題はそのだらしなさなのだ。
部屋は勿論、生活や考え方に至るまでけじめがないから良くない。
今回も術の実験中に近くにあった棚が壊れ、更に手前にあった物一山を巻き込んで術式の中に混ざり込んでしまったのだとか。
武将達はその中にあったゲームソフトのキャラクターらしい。道理で世界への影響が強い訳である。この世界ではゲームでも、彼らの世界ではそれが現実だ。世界の主役が居なければ歴史は始まらないに決まっている。
以前にも二度程同じような失敗をしていたから、既に汚い部屋での実験はするなと再三に渡り言い付けていたのだ。
それにも拘わらず、この有り様。
遂には他人様まで振り回して、もはや俺の頭が痛むだけでは済まない。
『物が落ちただと?お前は俺を馬鹿にしているのか!!』
床にへばりついて震えている阿呆を怒鳴りつける。顔も合わせずに只、ぶんぶんと首を振る態度にさえ腹が立つ。
大体、術の実験は周囲からの(同時に周囲への)影響が無いよう結界を張って行うというのが大前提だ。術に長けたこの男が作る結界ならば生半可な爆発でも壊れやしないだろう。
それがたかが棚の雪崩に侵入を許すなど有り得ない。張っていないか、手を抜いたことは明白ではないか。
『何時までそうしている気だ!』
「ひぅっ!もっ…もうし、わけ…あ…ぅぅ…」
情けない短音を出すばかりで、這いつくばったまま満足に話せもしない。智彰への怒りは収まらないが、今はこれ以上のしようがないと改めて片倉と風魔の二人に向き直る。
『…申し訳ない。今お聞かせした通りのようだ』
途端に何故かびくりとした二人に頭を下げる。本当ならばこの阿呆を叩っ斬ってもらっても構わないところだが、例え馬鹿でもこれの才は呪を解く為に必要なのだ。
「…お、おぅ!あ…いや、そう…!一先ず政宗様に合わせてくれ。この目でご無事を確認させろ」
頷く。やけにぎこちない片倉のことも気にはなったが、とりあえず風魔も異存は無いようだから、一緒に来てもらうことにした。
『智彰』
「はいっ!!?」
『お前も来い。直に詫びろ』
取れるのではないかという程頷きながら、気持ち悪い速さで立ち上がる。
無駄に直立した智彰を見ながらも、目は家の武将達を捉えていた。
…俺は一体、彼らにどの面下げて会えばいいのか。
(想像以上に最悪)
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