来訪一週間以内1.





大勢での生活にも慣れはじめた四日目。
夜中に武将達の事を調べてはいるが、予想通りなかなか捗らない。

「だいすけー」

気分的にどこかすっきりしない感覚を引き摺る自分とは違い、彼らの方は大分こちらに馴染んだらしいが。

「‘けーたい’がなってるぜ」

鳴り続ける電話を掴んだまま、元親が小走りに近づいて来る。

『おー、悪りィな』

表示は従兄弟の智彰。珍しいのは相手だけでなく、着信でかかってきた事もだ。

『どうした』

届けてくれた元親の頭を撫でながら(…もう自制するのは諦めた。)通話を始める。

「…!大輔〜!!助けてくれっ!!!!!」

聞こえてきた声は押し殺したような怯えたもので、半分泣きが入っている。

「とにかくウチに来てっ!!!」

頼むから早くと急かされて、よくわからないが大変なようだ。
通話を切ると心配そうな元親と目が合う。どうやら筒抜けだったらしい。

「おい、いまのやつへーきなのかよ?」

『さあな…とりあえず少し空ける』

今日中には戻るだろうが…大丈夫だろうか。

『何かあれは電話してくれ。使えるな?』

アラビア数字も電話の使い方も教えた。一応電話の横にも紙にそれを逐一丁寧に書いて貼り付けてもある。

「おう!ばっちりよ!」

特に元親はからくり好きだし心配はないと思うのだが。


…この外見が必要以上に不安を煽る。


とは言っても智彰を放っておく訳にもいかない。何とか自分を納得させ、仕方なく子供だけが残る家を後にした。





* * * * *






車で約一時間。割と早く着いた方だろう。
その安堵感も束の間、智彰の家の玄関を開いた瞬間自分の目を疑った。

『…………』

元から汚かったが、現状は記憶の比ではない。思わず絶句するような光景が見える限りに広がっていた。

「…〜〜だいすけー!!!」

廊下の奥、壁と扉の隙間から辛うじて智彰の姿を確認した。目が合ってもまだ助けろと叫ぶので、足の踏み場もなく散らかった物の上を駆け足気味に進んでいく。

問題の部屋に入れば、散乱する物の中に三人の人物を発見した。

一人は当然、智彰。やけに隅の方で縮こまっているのも入る前から見えていた。
後の二人は見えない拘束(つまり呪)に手こずりながらも強引に動いている中学生くらいの少年。

両方とも明確に武器とわかる、所謂刀などを構えて。

「新手だと!?てめぇもこいつの仲間か!!」

「…………」

威嚇し、警戒態勢を強める二人の気配を見て、一瞬だが思考が止まった。


こいつらの気配とよく似たものを、俺は知っている。
ほんの一時間前に自宅で別れたばかりなのだから。


…面倒だ。


いや、面倒以上に嫌な予感がひしひしと感じられる。
それも、先見の一族の予感だというのに、疑いを挟む余地もない程はっきりとだ。




『…戦国の世から来たんだな?』

「「!!!??」」

見逃すまいとするまでもなく、二人はしっかりと反応してくれる。


…こめかみの辺りがズキズキと痛い。

面倒ばかりな上に、この後に悪い出来事は確定してしまっている。

可能なら今すぐにでも頭を抱えて叫び出したいくらいには気分が悪い。


だが口から出るのはため息にもならないような呼吸のみ。




まずはこの二人を落ち着けて、説明を聞かせる事の方が先決なのだ。




(知らないはずの知ってる相手)





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