来訪直後3.
『俺は高向大輔。こっちは比野俊基』
「たかむこ…?」
遅すぎる自己紹介に何人かが食いついた。
「たかむこの名にそのようじゅつ…きさまもしや、あの“たかむこ”か」
そういえば毛利は中国辺りの勢力だったな。確かに一族は瀬戸内を中心に暮らしてきた。
「おもいだした!きっかいなじゅつをつかうヤツらか!!」
長宗我部も噂を聞いた事があると言う。
「ぼくはおんみょうの大家だときおくしているけど」
「おれさまもー。でもでんせつのたぐいかとおもってたよ」
どうやら伊達と真田以外は一応、俺達一族の事を知っているらしい。
『そっちにも高向は在るらしいな』
「みたことはねぇんだけどな」
「たかむこどのはおんみょうじなのでござるか!?」
『…まあ、似たようなものだ』
正確には違うが、説明するのが面倒くさい。
説明したところで、一般人からすればどうせ大して違うようには思わないだろうしな。
「いいから始めようぜ。わざわざ準備してきたんだからさぁ」やや脱線した話題に、戻って来た俊基が焦れたように割り込んでくる。
確かにそうかと、急かされて手早く道具を並べながら、ついでに正面に伊達を座らせると何枚かの札を握らせた。
「なんでオレなんだ?」
「怖じ気づいてんのかよ」
煩い二人を再度座らせつつ、伊達に紐の片端を持たせた。真ん中は大皿に張った水に浸け、もう片端を自分で掴む。
『どうせなら一番良い席で見たいだろう?』
何しろ術の中心となれば直に俺の視界を共有できるのだ。自分で向こうの世界を覗けるわけだからな。
そういうのが好きそうなタイプかと思ったんだが。
まあ特等席だと言っただけで大人しく腰を落ち着けたわけだから、あながち間違えてもいないんだろう。
『他にも知りたい奴は伊達の体に触ってな』
そう言えば、結局全員が集まっている。
…例外も、いたが。
「ダンナはきけんだからだめ」
「なっ!?じぶんだけずるいぞさすけ!!」
「ずるいとかじゃないでしょー?」
「ずるい!!それがしもしりたいでござるっ!!!」
しばらく言い争っていたが、結局真田は諦めさせられていた。
(現状を把握しましょう)
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