可愛い後輩な彼のセリフ【佐助】
後輩な主人公×先輩な佐助
* * * * *
ふと目線を向けた体育館の横。
初々しくてなんとも可愛らしい女の子が、遠目にも格好の良い男子に話しかけている光景。
あれはたしか一年で一番可愛いと評判(だと前田のダンナが言っていたはず)の子だったろうと思う。
男の方は自分も知り合いの…というか、部活の後輩の大輔だ。
相変わらずモテるよなと思いながら、あれだけ良いヤツならそれも仕方ないだろうとも思うわけで。
同じ男としては多少の悔しさがないわけではないが、納得できてしまうから相手が悪い。
まぁ俺様だってそれなりにモテるし。嫉妬するほど困ってないから言えるんだけどさ。
だから別にいつもの風景だと思ってまた目を前に向けてその場を離れた。
まさか見ていたことに気付かれていたなんて思わなかったけど。
「お疲れ様です」
部活最後の休憩時間、ドリンク片手に大輔が近づいて来たから自分もお疲れと言って返す。
「相変わらずモテるねー大輔」
「…やっぱり、猿飛先輩だったんですね」
「気づいてたの?」
聞けばはいと一言、ばつが悪そうに。
そんな顔まで絵になるなんてヤな野郎だねまったくさ。
「今回はまたずいぶん可愛いコだったじゃない?」
曖昧に笑う大輔に、勿体ないと笑った。
「俺様だったらとりあえず付き合ってみるけどねー」
勿論その後振るかもだけどさ。味見くらいするね。
なんで毎回振ってしまうのかとからかうつもりで言っただけだったのに。
「だって俺好きな人いますから」
「え…それ初耳なんだけど」
「初言いですから」
誰だと問い詰め始めた時になって、集合を知らせる笛が鳴る。
「じゃあまた」
そう言って離れようとした大輔の腕を捕まえてずるずると練習場から離れて行く。
だってこのモテ男からは好み一つ聞いたことなかったのに、まさかいきなり好きな相手がいるだなんて爆弾発言。
そんな面白い話を放って部活になんか集中できるわけないし。
「猿飛先輩?」
「えー?だって気になるでしょー。大輔の好きな相手なんてさ」
死角になる位置まで連れてきて壁と自分の間に立たせる。
困ったような顔はしているが、抵抗しないところが穏和な大輔らしい。
「で?誰?」
この後輩に思われた幸運な相手は一体どこの誰なのか。
にやにや笑いながら詰め寄れば諦めたのか溜め息を一つ。
「……真田先輩です」
「へ…?」
完全に予想外の名前を理解するのに数秒。
自分がした質問の意味を振り返るのにまた数秒。
結果的にしばらく沈黙が流れることになったわけで。
だって大輔が真田先輩って言ったらそりゃダンナ一人を意味するわけで。
「…え、ちょっ……うそだろ?」
「はい」
「だってダンナってだって…………は?」
気付けば詰め寄ったままだった二人の位置があっと思う間もなく半回転。
くるりと入れ替えられた体勢はまさかの自分が壁際に追い詰められた形で。
「勿論、嘘です」
「…あの……大輔、さん…?」
「ちょっとした照れ隠しですよ」
ふっと笑う大輔はどう見てもいつもの良くできた後輩ではなく。
「どんな女子より先輩の方がかわいいですから」
「冗談…」
「俺はいつも先輩を意識してました。だからさっきだって見られてたことに気付いたんですよ」
自分より背の高い大輔に閉じ込められるように囲われて、見上げる顔は完全に男の顔だった。
「……大輔…」
「俺だって男なんですよ?好きな人にこんなに近寄られたら出来る我慢にも限界があります…」
「っ大輔…!」
合わされそうになる視線を避けて下を向く。ついでに肩を掴まれた腕をなんとか剥がして下ろさせた。
それでもまだ頭はまだぐるぐるしていてとてもじゃないがまともに顔なんか見られやしない。
「先輩…首まで真っ赤ですよ」
「っ!!」
慌てて首を隠すけど既にまったく意味はなく。
手に当たる自分の肌が熱くて余計に混乱するばっかり。
「今はそれでもいいですけど」
いまだに近い大輔の顔。
耳元で流し込まれる声に心臓まで熱くなりだして、もうとっくに自分ではどうにもできなくなっている。
「好きですよ猿飛先輩」
付き合ってくださいと囁かれた音はどうにもこうにも甘ったるくって優しすぎて。
「返事は先輩から言ってくれるまで俺、待ちますから」
そんな親切に猶予期間をもらうまでもなく、十秒後には望まれる答えを言ってしまいそうな自分にいよいよもって眩暈がした。
* * * * *
お題は確かに恋だった様よりお借りしました。
ふと思いついたら止まらなくなったので。はい;
今までは逆の先輩×後輩ばっかり考えてましたがこれはこれでなかなか悪くない気が…
先輩×後輩佐助の同志の方は1を、後輩×先輩佐助の同志の方は2を拍手コメントでご入力くだs………冗談です。すいません。
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