花占いというものは





今日は


大輔ちゃんが


構って



「(…くれる)」


と、良いなと思いながら、手の中の花から花びらを一枚つまんで捨てる。
耳と手に残るぷちんという感覚をなぞりつつ、ひらひらと落ちる花びらを追って自分の下に目線を向ければ。


「まだ続けますか」

「や!まてまて…今反撃の一手をだな…」


木の上から見下ろす縁側、碁盤を挟んで向かい合うのは自分の国主と好いた人。
このところ二人はいつもこうして碁を打っている。


「投了はいつでも結構ですよ」

「むぅ…、可愛くないのぅ…」


難しい顔で唸る大将相手に大輔ちゃんは呆れ気味で。
どうやら今日も大輔ちゃんが圧倒的に優勢らしいけど、今日も大将は諦めないらしい。

そういうとこは本当、真田のダンナと似たもの師弟だよな。


…っていうのはまぁ、良いんだけど。

それはつまり、大将が長考に入ってしまったということで。
それはつまり、今日もまた大将が大輔ちゃんを独占するということだ。


「(…………ずるい)」


ぷちん、とさらに一枚地面に送る。だって昨日も一昨日も大将が一日中碁の相手をさせていたのに、また今日もずっと捕まえているなんて羨ましい。
一緒に来た自分はまだろくに話も出来ていないってのに、まったく大将はずるすぎるじゃないか。


「(か・ま・っ・て、くれ……ない)」


結局また駄目なのかと思いながらむしむしと黄色い花びらを千切って捨てる。

くれる、くれないと心の中だけで呟きつつ、ぷちぷちぷちぷちと散らされていく手の中の花。

そんなふうに八つ当たり気味に占っていれば、当たり前だが花びらなんてあっという間に残り数枚になってしまって。


「(……あーあ)」


“くれる”で止まった自分の手。
それなのに花びらは残り一枚。

暇つぶしのこんな子供騙しの占いですら、自分の思う通りにならないらしい。


「(あれ…?)」


…と、思ったのだが。

しかし気付けば花には二枚の花弁が残っている。
一瞬前まで確かに一枚だったのに、瞬きひとつする間にどうしてか一枚増えているのだ。

どういうことかと思ってまじまじと花を眺めていれば、視界の中、大輔ちゃんがこちらを見上げて笑っていた。






* * * * *





ようやく諦めた大将が部屋の奥に引っ込んですぐ。
さっきと同じように笑った大輔ちゃんが自分のいる木の下までやって来る。


「三戦三勝」


得意げに三本指を立てて笑う。
確かにあの大将からこうも簡単に勝ち星を奪うんだから、見事な腕前と言うほかないんだけどさ。


「…おめでと。でもきっと大将、明日も勝負申し込んでくるよ」


負けず嫌いだからと付け足せば、しかしそれはないとあっさり。


「三回勝負の約束だからな」

「約束?」

「そう」


手招きされて近寄れば、誉めるみたいに撫でられた。
俺様犬じゃないんだけど。


「三回やって俺が勝った数だけ佐助を一日貸し切れる、っていう約束」

「……は?」

「だから、明日はもう打たない」


言うと、さっきまでの得意げな笑顔からほんの少し眉を下げて、困ったように苦笑する。


「なぁ、障害が多すぎると思わないか」


確かに任務やら戦やら大輔ちゃんの仕事やらなんやかんや。
そしてもちろん大将とかダンナとかおもしろ半分に乱入してくる他国の奴らとかその他もろもろ。

そういったこと全部が全部上手く噛み合わないと二人っきりにもなれやしないのは、自分もつくづく面倒だと思ってはいたけれど。

まさか大輔ちゃんまでそう思っていたとは知らなかった。


「明日からの三日間は俺が予約したから」


嫌がるなよと笑いながら、やりたいことを考えておくようにと続けて言われる。


「花占いの通りだろ?」


最後にもう一度おまけのように撫でられれば、俺様が大輔ちゃんに抱き付くことになるのはもちろん、言うまでもない…でしょ?









* * * * *






ミノ虫。さまに捧げる…というか押し売りしたというかムニャラムニャラ…な、お話です。
やり直しと撤去と抹消はミノ虫。さまからのみ受け付けます!




おまけ





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