ブーゲンビリア





「…元気だせよ佐助」


「………………………」


鬼の旦那の気遣うような声も、正直耳に入らない。
だって目の前はただもう真っ暗で、頭の中は後悔でいっぱい。そんな状態では元気なんか出るわけもなく。


自分の突っ伏す机の上に広がる包装紙は甘党のダンナのために俺様が足でさがした隠れた名店のもの。
甘過ぎず多すぎず、かといって高過ぎず有名過ぎずいろいろとちょうど良い。それでおまけに店主も好い人とければもう、なんの文句もない店なのだ。

もちろんそこのお菓子は俺様のオススメ和菓子トップ10に入る指折りの一品…ではあるのだが、今の自分にとってはただただ作戦敗けの手痛い物証でしかなく。


「別に迷惑がられたわけじゃないんだろ?」


さっきからそう言って慰めてくれる鬼の旦那に頷いてはいるものの、やっぱり舞い上がりすぎていた自分に目眩がするわけで。

ぶっちゃけ、確かに俺様は前田の旦那に後押しされてから、毎回のように…というか、実際毎回差し入れに行ってたよ。孟隻さんに頼んで独眼竜のスケジュールきっちり押さえてさ。
だってほんとに会いたかったんだもん。

…でもまさかそれがこんなに裏目に出るなんて。





いつも通り差し入れを持って向かった撮影現場。
いつも通り眼帯野郎の様子見もそこそこに高向さんに挨拶をしに向かったら、


「いつも伊達君の応援に来てるんだな」


仲間思いで優しいなって、ここまでは最高だったんだけど…さ。


「もしかして、スケジュール今暇なのか?」





…なんて……ちょっと真顔で言われちゃったわけで…。

確かに高向さんて優しいし大人で格好良くて落ち着きがあって………、ついでにほんのちょっぴりだけど天然入ってるのも知ってるけど…!
言い訳なんかじゃないけどさ!


「まぁ…確かにお前、あんだけ仕事あるくせにいっつも行ってたもんなぁ…そりゃ誤解もされっだろ」


だけど!
CM撮りにラジオに雑誌の取材だって受けて、レコーディングもダンスレッスンも学業も全部全部全部ちゃんとやってそれでも頑張ってスケジュール調整して通ってたのに…!

その完璧さが裏目に出るとか…あぁもう…俺様立ち直れないかも…。
優秀すぎる俺様のバカ…。


絶対高向さんに暇人と思われた!絶対人気ないと思われてる!もしかしてあの眼帯野郎と比べられてたりするのかも…てか絶対比べられてるし!だって同じグループだし!
もしそれであいつを見直してたりしたら最悪すぎるよ!?



…あー…もうヤダもうダメ、限界だって。頭ん中ぐるぐるするし…全然なんにも考えらんない…。


「……鬼の旦那……短い付き合いだったけど…俺様あんたのことは嫌いじゃなかったよ…」


「はぁ!?ちょっ…なんだそりゃ!?おい、死ぬなよ佐助!!?お前ならまだ挽回できんだろ!?」


肩を掴んでめいっぱい揺さぶってくる鬼の旦那にほんの少しだけ癒しを感じるよ…。



…ていうかでも、なんだかんだ言ってそれでもまだしっかり高向さんのことを考えてる自分てば、なんてしぶとい性格してんだろ…って実感しちゃってんだけどこれってどうなの?





- 23 -


[*前] | [次#]
ページ:




目次へ
topへ



「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -