ペンステモン





いよいよ始まった高向さんの新ドラマ。
収録はまだまだ続くけど、番宣はもうないわけで。


(…高向さんに会えなくなっちゃったなー…)


たとえ取り巻きの壁が厚くてなかなか近寄れなかったとしても、昨日までは高向さんと同じ空間にいられたから幸せいっぱいだったのに。

今はただテレビ越しに動く高向さんの姿を見つめるだけ。
録画したドラマを見るのもこれでもう三度目。放送したのが一昨日だから、これは結構なハイペースなんではないか。


「…独眼竜…いつかシメる」


見る度に映る不愉快な眼帯野郎。デビュー二日目でこのドラマの準主役になったのも若干苛つくが、なにより高向さんと共演しているのが許せない。自分と代われともう何百回呪ったことか。

…とはいえ奴のあのちゃっかりした抜け目のなさのお蔭で、昨日まで高向さんと一緒にドラマの番宣ができたのも事実なのだが。


(…まぁ、一番抜け目ないのは孟隻さんだけどね)


何しろぽっと出の新人をゴールデンタイムの新ドラマにねじ込んだだけでなく、その主題歌の権利まで勝ち取ってきたのだ。
その手腕というか豪腕というか…頼もしいマネージャーではあるんだけどさ。

それと比べれば独眼竜のちゃっかりさなんて可愛いもんだよ。芝居がしたいって孟隻さんに言っておいただけだし。
逆か?孟隻さんを使ってるんだから上手なのか?

てか、なによりも孟隻さんに言っておかなかった俺様のバカ!
あの頃の自分を殴ってやりた…


「さーすーけー!!」


鬱々と廻る思考をぶった斬るように勢いよく鳴らされまくるチャイムとそれと張るくらいの大声。

あぁホント、このマンションが俺様たちグループの貸し切りでよかった。孟隻さんマジで有能すぎ。


「ちょっと!前田の旦那うるさすぎだから!」


「なーに細かいこと言ってんの!てかさ、駄目だろー?今こんな部屋にいちゃあ!」


あわてて開けたドアの前に立っていたのは、バッチリ仕度を決めた前田の旦那。
今日はスケジュールなんかなんにも入ってないってのに。


「なんでさ?」


「差・し・入・れ!政宗をだしに高向さんにアピールしなきゃ!だろ!?」


「!!」


にかっと爽やかに笑ってついでにウインク。さすがアイドル、じゃなくてその恋愛脳!
よくまぁそんなこと思いつくもんだよ。


「恋はやっぱり、押しの一手あるのみってね!」


もうひとつ爽やか笑う相手を思わずまじまじ見つめながら、あぁもうなに着て行こうかだなんて考えてる俺様も、結構な脳みそになってきてるよね。





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